執行官の、日常 5
アインさんツヴァイさんとともにアマーリエ様がいる部屋に入る。
アマーリエ様は、グラスに注がれた擬似血液を飲んでいた。
「……アイン、ツヴァイ。ご苦労様」
私たちが入ったことを確認すると、グラスから口を離して二人に労いの言葉をかけた。
その一言に、二人は瞬時に頭を下げた。
「勿体ないお言葉です。引き続きアマーリエ様のお役に立てますよう、粉骨砕身する所存です」
アインさんの言葉に、アマーリエ様はクスリと笑う。
「相変わらず、アインは真面目ね。そう固くならずとも良いのに」
「い、いえ……そのようなことは……」
「なんて、ね。そこが貴方の良いところだし、その方が楽ならそのままで良いのよ。さて、それぞれの街の様子は?」
「オーゼンの街は、変わりなく。ただし、黄昏の森より現れる魔獣の量が直近僅かに増えてきています。比較的森の浅瀬で現れるシルバーウルフの群なので、今のところ問題にはなっておりませんが」
「ブローゼルの街も同じようなもんです。直近シルバーウルフが現れるようになりましたけど、住民への被害は出ていません」
「どれだけ増えているの?」
「昨年比十パーセントほどです。尤もブローゼルの街と同じく負傷者は内隊の者で軽傷が二十数名程度、住民たちにいたっては損害はがゼロに抑えられています」
「そう……」
アマーリエ様は一瞬考える素振りを見せた後、ジークベルトの方を向く。
「……ジークベルト。ヴォルターに、開発している新型の地帯防御型の魔法陣をアインに渡すように伝えて頂戴」
「承知しました」
「……地帯防御型の魔法陣とは何でしょうか?」
完全に第三者だけど、気になったので
「予め地面に埋めておいて、キーとなる詠唱を唱えるとその魔法陣が爆発する仕組みの魔法陣よ。……いつも通り使い方は、アインとツヴァイに任せるわ。魔獣を排除するために、役立てなさい」
「ありがとうございます」
「それと、ヴォルター。クリスティンに防衛計画に付随する食料や医療品の配布計画に関して確認するよう伝えておいて。想定よりも、魔獣の侵食が早い筈だから」
「承知しました」
「ヴォルターさん、食料や医療品の配布計画については私の方で承ります」
そう申し出ながら、頭の中では計画を浮かべた。
……確かにアマーリエ様の言う通り、今後の魔王戦を踏まえると計画を微修正する必要があるだろう。
けれども現時点ではさしたる影響はない筈。
それは、この地の生産体制が整っているからだ。
まず主要な食料品は分散して生産するようになっている。
また、一定数の生産者を確保するために税の優遇や価格の介入等々支援が手厚い。
そしてその結果、王国に依存せず、この領域だけで消費を賄えるような生産量を誇っていた。
「ああ……そう言えば、ディアナは今、対魔王戦の業務に携わっていたわね。クリスティンから、貴女の活躍について聞いているわ」
「……勿体ないお言葉です」
「貴女には、新たな風を吹き込んでくれることを期待しているわ。それから、アイン、ツヴァイ。二人には引き続き負担を強いるけれども、よろしく頼むわ。手に負えないモノが現れたら、すぐに連絡なさい」
「「は」」
……さっきの悪戯っ子のような反応をした人物と、同じ人なのか?と疑問に思うほど、ツヴァイさんまで真面目な雰囲気を出していた。
「ただ、ここにいる間はゆっくりしていって頂戴ね。対魔王戦の話し合いで、二日はいるのでしょう?」
「はい、その予定にございます」
「ならば、ジークベルト。とっておきのお酒を開けて頂戴」
「承知致しました」
「「ありがとうございます、アマーリエ様!!」」
「ディアナ。貴女も飲む?」
「宜しいのでしょうか?」
「勿論。ただし、明日業務ができるかは保証できないけど。皆、ウワバミだからねえ。……あ、ジークベルト。ついでに屋敷内の手の空いている人は皆、呼んできて」
「畏まりました」
それからその流れで、アインさんツヴァイさんの歓迎会も兼ねてお酒を飲んだ。
出されたお酒はとっても美味しかったのだけど……美味し過ぎてつい飲み過ぎてしまった。
流石に前後不覚とまではならなかったけれども……私以上に飲んでいた筈のアインさんツヴァイさんそれからアマーリエ様は顔色一つ変えていなかった……。




