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黒薔薇姫は、怠けたい  作者: 澪亜
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黒薔薇姫の、過去9


エルマが満足して、やっと私は着せ替え人形としての役目御免。

それから、私たちはアルベルトとカミルと合流して夕飯を食べに行った。


『そういえば、アルベルトとアマーリエはいつ結婚するの?』


直球すぎるエルマの問いに、飲み物が変なところに入ってむせた。


『一応、来年の予定』


そんな状態の私を気遣いつつ、アルベルトが答える。


『へえ!準備はどうしてるの?』


『まだ、特には何も。そろそろ始めようかって話してたところだね』


『衣装は?!』


『当日のセットは?!』


エルマとカミルが同時に凄い勢いで聞いてきた。

鬼気迫る様子に押されて、私もアルベルトも若干体を引く。


『衣装もセットも未だ決めてない。まあ……結婚式は故郷で挙げる予定だから、カミルにセットをお願いするのは難しいかな』


『でもでも、衣装ならいけるよね!?私、アルベルトとアマーリエの結婚式用の服、作りたい!』


『ありがとう。私たちもね、エルマにお願いしたいなあって話してたの』


『本当!?やった!任せて』


『ちえ……俺も、アルベルトとアマーリエのセットをしたかったぞ』


嬉しそうなエルマとは対照的に、カミルは残念そうな表情を浮かべている。


『あ……それなら、こっちでも街の皆でお祝い会を開くのはどう? 勿論、アルベルトとアマーリエの負担にならなければの話だけど』


エルマとカミルのおかげで、大分この街にも知り合いができた。

特に同世代の人たちと集まることは、今世ではなかったことだったから新鮮で楽しい。

アルベルトも、戸惑いつつも皆と遊ぶのを楽しんでいる様子だった。

皆が祝ってくれるのなら、そんな嬉しいことはない。


『むしろ、僕たちの方がお願いしたいぐらいだよ』


『そうね。……でも、二人の負担にならない?』


『全然! 流石に二人の故郷にはついていけないけど、二人をお祝いしたいもの。あ、仕事の方を心配してくれているなら心配しないでね。二人が私たちのドレスとセットで街中歩いてくれるだけで、むしろ私たちの方が助かっちゃうもの』


『エルマの言う通りだな。盛大に、二人の門出を祝おうぜ!』


『という訳で、次回はアルベルトも私のところに来てね。アマーリエはともかく、アルベルトは採寸から始めなきゃ』


『採寸はともかく、打ち合わせには俺も立ち会わせてくれ。ドレスのイメージに合わせて、セットも考えるから』


『そうね。腕がなるわ』


二人の息があったやり取りに、けれども少しだけ寂しくなった。

傍目から見て、二人は互いに互いを信頼し合い、思い合っている。

けれどもエルマは、これ以上踏み込まないようにと線引きをしている。

そして多分……カミルも、そう。

まるで自分の思いを拒絶しているかのように、一定の距離を保っていた。


二人の夢を応援する思いは真実だし、私がどうこう言える話じゃないからこそ……二人のやり取りを見ていると、やりきれない思いが込み上げてくる。


『アマーリエは、どう思う?』


『あ……ごめん、ごめん。ちょっと考え事をしてて、話をちゃんと聞いてなかった。それで、なんの話?』


『来年はちょうど、エメルハルト王が即位して五周年を迎えるから、王都で大きな式典があるみたいなの。勿論式典の参加者は貴族だけだけど、それに合わせて城下でも祭があるんですって。アマーリエは、それ見てみたい?』


『気になるわね。王都に行ったことはないし、見てみたいかも。エルマとカミルは?』


『一度は行ってみたいのよね。やっぱり、流行の中心は王都だから、この目で見てみたい。というより、一度そこで修行するべきじゃないかしらって考えているところ』


『俺もエルマと同じ意見』


『そう……。じゃあ、二人ともいずれはこの領地から旅立つかもしれないのね』


『まあ、まだ悩んでいるところだけどね。それはともかく、折角の祭だし、アマーリエとアルベルトは新婚旅行も兼ねて見てくるのも良いかもね』


『そうね。……それにしても、即位五周年か。随分と若い王、なのかしら?」


このメンバーだからか、気が緩んでつい正直に思ったことを口にしてしまっていた。

……自国の王のことを全く知らないとでも言うかのような発言は、流石に怪しく思われるだろうと慌てて口を再び開く。


『あ、ごめんなさい。田舎の村だったから、そういうことに疎くって……』


『ああ、そういうことね。そうね……確かエメルハルト王は二十歳の時に即位したから、まだ二十五歳。王様としては、若いかも。なんて、年下の私が言うのも変だけど。……けど、素晴らしい王だって評判は耳にするわね。魔獣の被害を減らそうと、警備隊を設立したのはエメルハルト王だって聞いたわ』


『あれ……警備隊、なかったの?』


『え? ええ、そうね。あれ? そういえばアマーリエの村には派遣されていないの?』


『本当に小さな村だから、派遣されていないのかも。その代わり、村の人たちで自警団みたいな感じで昔から自分たちで村を守ってきたわ。……逆に、警備隊が設立されるまではどうしていたの?』


『まあ、魔獣はよく街道に出るらしいけど、街を出る奴なんて貴族や商人ぐらいしかいないからなあ……そう言った奴らは、護衛を雇えるだろう? たまに街に魔獣が出た場合は、お前らのところみたいに、皆で協力して何とかって感じだったな』


『へえ……この街って黄昏の森近くで、他のところよりも魔獣が現れるって聞いてたから、てっきり昔から警備隊ってあったんだと思ってた』


『領主が守っていたのは、自分たちのことだけだよ。貴族なんてそんなもんだろ。まあ、ここの領地はほぼ黄昏の森に面しているから、手が回らないってこともあるのかもしれないけれどもな』


『そっか……』



『だから、エメルハルト王のおかげで、魔獣の被害が減ったのは事実だな。少なくとも俺たちの領主よりも俺たちのことを考えてくれているって感じがする』


『ふーん……それなら、祭もきっと盛大だろうね。カミルみたいに皆王様のことが好きで、祝いたいって思っているだろうから』


『ばっ……俺は別に、好きとか思ってねえよ。単に、他よりマシだなって思っているだけ』


それからも私たちは色んなことを話しながら、その日もゆっくりと食事をしていた。

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