黒薔薇姫の、過去6
『こんにちは!』
お母さんの作ったパイを持って、アルベルトの家にお邪魔する。
『あらあら、アマーリエちゃん。こんにちは。アルベルトなら二階よ』
『ありがとうございます。あ、これウチの母親からです』
『まあ、ありがとう。ブリエナさんのパイは絶品だから、とっても嬉しいわ。後で持って行くわね』
『はーい』
パイを持って奥へと去って行ったアルベルトのお母さんの代わりに、ブルーノがやって来た。
『こんにちは、アマーリエ』
ブルーノは、アルベルトによく似ている。
否、逆か。アルベルトは、ブルーノによく似ている。
けれどもアルベルトが整い過ぎて人形のようで、ともすれば相手に威圧感すら与えかねない顔立ちなのに対し……ブルーノは、より人間らしく温かみの感じられるそれだ。
『こんにちは、ブルーノ義兄さん。……あ、それ、警備隊の制服ね。よく、似合ってるわ。今日はこれから仕事?』
『ありがとう。うん、そうなんだ……今日、これから初出勤でね。緊張して仕方ないけど、頑張ってくるよ』
ブルーノは、そう言って柔らかく微笑む。
その見た目通り、ブルーノはとても温和で優しい。
『そっか。ブルーノ義兄さんなら大丈夫よ。頑張ってね』
私はブルーノを見送ると、二階のアルベルトの部屋に向かった。
『ブルーノ義兄さん、今日、初出勤だってね』
『ああ、そうだね。今朝から、ずっと緊張した様子だったな』
『まあ、仕方ないよね。魔獣や犯罪者と戦う仕事だもの……危ないし、むしろ緊張してくれた方が危険を察知できて良いんじゃない?』
『まあ、そうか。……一応、何かあったときのために制服に通信機をつけておいたから、危なくなったら駆けつけるよ』
アルベルトは、ブルーノのことを慕っていた。
吸血鬼として生まれたことを、家族の中でブルーノが一番に受け入れてくれたからだとか。
だから、この行き過ぎた兄弟愛も分かる。
……と言いたいところだけど、やっぱり通信機で常に見張るのはやり過ぎだ。
『つ、通信機? どんなの? それ、義兄さんにちゃんと伝えた?』
『大怪我をした時とか、魔力が急激に下がった時だけ居場所を知らせるようになっている。ちなみに、今朝できたばかりだったから、兄さんには伝えられてないよ』
『ま、まあ……怪我した時とかだけのものだったら、良いか』
私は、そっと溜息を吐く。
『さて、今日は祝い会の計画を立てるんだっけ』
『そうね。えっと……皆の予定も確認した、プレゼントも準備した……あとは、当日の流れかな』
それから私とアルベルトは、解散するまで計画を詰めて行った。




