表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒薔薇姫は、怠けたい  作者: 澪亜
32/78

黒薔薇姫は、語る


私が生まれたのは、三百年以上前のこと。

当時黄昏の森の奥には、それはそれは美しい街があった。

……吸血鬼の末裔が暮らす、街が。


吸血鬼の末裔といっても、人間との混血が進んでいて、村に住む人は殆ど人間と変わらなかった。

多少、寿命が長くて魔力が高い……それぐらい。


純血の吸血鬼は、私が生まれた時点で既にいなかった。


「……純血の吸血鬼は、何故いなくなったのでしょうか?」


「伝えられている理由は、二つ。一つは、数千年前の吸血鬼同士の争いのせい。それで、殆どの吸血鬼は死んでしまったらしいのよね。それで生き残った僅かな吸血鬼たちも、不老長寿のせいで子孫を作らず眠りについていったそうよ。それが、もう一つの理由」


「……不老長寿のせい、ですか?」


「ええ、そうよ。だって……不老長寿は祝福なんかじゃなくて、呪いだから」


時の権力者が不老長寿を求めて、部下に無理難題を言ったり、国を傾ける程の財をかけたり、怪しげな薬に手を出す……なんてエピソードは前世でもよく目にしたものだけど、私からすれば、何故自ら呪いを求めるような真似をしたのかが分からない。


「……段々とね、色んなものが擦り減っていくの。年を重ねれば、重ねるほど」


「……よく、分かりません」


「そうね……終わりが見えない道を、ずっと走り続けているようなもの、と言ったところかしら」


膨大な時の流れに、自分が押し殺されていく。

次第に感情らしい感情が抜け落ちていき、そうして……絶望する。

果たして、自分は後どれだけ生きていかなければならないのか、と。


「そうして、いっそのこと眠りについた方が楽だと……そう、思ってしまうのよね」


そして全ての純血の吸血鬼が姿を消し、残されたのは、殆ど人間と変わらない吸血鬼と人間の混血。


……それなのに、何故か私は吸血鬼として生まれた。


私の両親は、勿論純血の吸血鬼じゃなかった。

けれども、生まれた私は……黒色の髪に真紅の瞳と、伝え聞く吸血鬼の特徴を見事に持って生まれた。

その上、莫大な量の魔力を持ち、吸血鬼固有の筈の魔法が使える始末。


『先祖返りだ』と、街の人たちは騒いだ。


吸血鬼の末裔だけの街だったから、あからさまに奇異な目で見られることは少なかった。

けれども、やっぱり私は街の人からしてみれば異分子な訳で。

……随分浮いた存在だったと思う。


それで私が孤立しなかったのは、幼なじみの存在のおかげ。

幼なじみのアルベルト……彼もまた、私と同じく先祖返りだったのだ。


私と彼はいつも一緒だった。

街には多くの住人がいて、結構子どもも住んでいた。

けれども、私の記憶にあるのはアルベルトと遊んだそれだけ。

後は……偶にアルベルトのお兄さんであるブルーノにも、アルベルト共々遊んで貰ったぐらいか。


今にして思えば、子どもたちが私たちを避けていたのは仕方のないことだし、家族やアルベルトと一緒なら別にそれで構わなかった。


だから私は、幸せな子どもとして日々を過ごしたと胸を張って言える。


「……ところで、当時はマルクベルス王国は建国したばかりで、アルトドルファー伯爵なんて家はなかった。今のアルトドルファー伯爵領は、元々二つの領地に分かれていたの」


何故か昔から、人の世では黄昏の森は不可侵の森として扱われていた。

そしてそこに住み着いていた私たち吸血鬼の末裔は、森の外とは一切の交流を持たず、その存在を隠すようにひっそりとそこで暮らしていたのだ。


……実は、私はそんな状況に少しだけ不満を持っていた。

折角、異世界で生まれ変わったのだ……この世界がどんなところなのかということを、知りたかったのだ。


そんな訳で十代後半の頃には、よく森の外にお忍びで遊びに行っていた。

勿論、その大半はアルベルトを巻き込んで。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ