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黒薔薇姫は、怠けたい  作者: 澪亜
31/78

執行官は、問いかけた

「……ディアナ。先ほどは、取り乱してしまってごめんなさいね」


そう言いながら、アマーリエ様は私の対面の席に座った。

アマーリエ様と共に部屋に戻って来たカイさんとヴォルターさんそれからラインハルトさんも、先ほどと同じ席に座る。


「私の方こそ、失礼致しました」


「良いのよ」


「寛大なお心、ありがとうございます。……ですが、一つ質問を宜しいでしょうか?」


私の問いに、左右に座る皆が剣呑な目を向けた。

私が不用意な発言をしないか、気が気ではないのだろう。


私自身、先程のことがあったにも関わらず、よくぞ質問をしようと思ったものだ……と、我ながら驚いていた。


「アマーリエ様、貴女様は一体『何』ですか?」


ずっと、違和感を感じていた。

まるで、賢王を直接知るような口ぶり。

直接その戦いを見ていたような、発言。

極め付けは、『三百年待った』というアマーリエ様の言葉と、ディアナとの会話。


それら全てから導き出される想像は、あまりにも荒唐無稽。

けれども、先ほどのアマーリエ様の怒りを見るに、とても『有り得ない』と切り捨てられない。


……アマーリエ様が、三百年前から生きているのではないかという想像は。


「……何、か。そうねえ……陽の光を浴びたら、灰になってしまう。ニンニクと銀に弱く、心臓に杭を打たれれば死ぬ。人の生き血を吸い、長寿を誇る種族。皆のイメージって、そんなところかしら」


「……ニンニクとは、何でしょうか? あと、銀に弱いことは初めて聞きましたよ」


苦笑いを浮かべつつ問いかけたヴォルターさんに、アマーリエ様も笑う。


「あら、あの野菜……ニンニクという名前じゃないのかしら? まあ、それはどうでも良いか。……そんなことよりも、ディアナ。貴女はそんな空想上の生物の名を、知っているかしら?」


まさか……だとか、ありえない……という言葉が、頭の中を駆け巡る。

だって、あれは空想上の生物なのだから。


「……吸血鬼」


けれども不思議と、するりと口から言葉が溢れた。


「正解。私はその吸血鬼属の生き残り」


未だにアマーリエ様が吸血鬼だということに頭の中が混乱がしていたけれども、妙に納得している自分もいた。


「ああ……けれども、さっきの例えは物語だけのものなのよ? 陽に当たっても、私は灰にならないし……銀に弱いこともないし、心臓に杭を打たれても……多分、すぐには死ねない。ああ……でも、不老長寿なことと生き血を吸うことは、当たっているわね」


「アマーリエ様は吸血鬼だからこそ……三百年前の争いも、ご自身の目で見た。そういうことですか?」


「やけに素直じゃねえか。信じられない……だとか、証拠は? とか、聞くと思ったのに」


カイさんの言葉に、私は苦笑いを浮かべつつ口を開く。


「……想定していましたから。流石にアマーリエ様が吸血鬼ということには驚きですが……むしろ自分の中で辻褄が合いましたので納得しています。それに……黄昏の森でアマーリエ様が使っていたブラッディ・レイン。あれは、吸血鬼にしか使えない魔法なのではないですか?」


普通、魔法は火・水・土・風の四大元素あるいはその派生魔法しか存在しない。

けれども、あれはそのどれにも該当しなかった。


「ええ、そうよ。吸血鬼にしか使えない属性が、二つあるみたい。その内の一つが、血属性。あのブラッディ・レインも血属性の魔法ね。よく、覚えていたわね」


「……それだけ、印象的でしたから」


「そう。……さて、質問は以上で良いかしら? もし良ければ、昔話をしましょうか」


……きっと、三百年前の話だろう。

私はそっと、アマーリエ様の提案に頷いた。


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