黒薔薇姫は、散歩をする
ディアナが疲れないよう、ゆっくりと走る。
シャリアンデから黄昏の森はとても近くて、走り始めて三十分過ぎた頃には到着していた。
軽く森に入る前に、体を伸ばす。
「ラインハルト。今日はヴォルターもいるから、競争じゃなくて共同で戦うわよ。私はサポートに徹するから、行けるところまで行きなさい」
「はい!」
「ディアナは付いて来れば良いわ。……カイ、貴方はディアナの護衛をお願いね」
「了解」
「ヴォルターは、カイの援護をお願い」
「承知致しました」
そして私は、黄昏の森に一歩入った。
瞬間、ラインハルトが剣を抜きつつ動きだす。
美しい軌跡を描きながら、一線。
彼が元の位置に戻ったその時、バラバラになった魔獣が落ちてきた。
彼は慣れた手つきで、魔核……魔獣から取れるエネルギーの結晶石をその死骸から取り出す。
それから、淡々と素材として使える部位を切り取ってカイに渡していた。
それが終わってから、私は火の魔法で魔獣の死体を燃やす。
相変わらず、良い反応。……なんて、この程度の敵で褒めてたら、ラインハルトの矜恃を傷つけるか。
そのまま、森の中程まではラインハルト一人で戦わせて進む。
敵が攻撃してくる前に、全てラインハルトは一太刀で屠り続けた。
中程まで進んだところで、休憩。
幸いにも、ディアナも疲れているようだけれどもちゃんとついて来ている。
「あら……」
その最中、魔獣が私たちを取り囲んでいる気配を察知した。
それも、一匹一匹が先ほどまでの魔獣よりも明らかに強い。
「ラインハルト。前をお願い。……ヴォルター。後方にさっきの魔法を撃ち込むわ」
「「喜んで」」
そう言うが早いか遅いか、ラインハルトが前に構えていた魔獣に突進して行った。
……一瞬だった。私のサポートなんて、いらないぐらいに。
そんな彼の戦いぶりを視界に入れつつ、私もまたヴォルターに先ほど見せて貰った新たな魔法を撃ち込む。
「……ラインハルト。貴方、腕を上げたわね」
無数の屍が転がる様を見て、呟く。
「本当ですか!?」
ラインハルトは目を輝かせていた。
「嘘は言わないわ。前までだったら、もう少し手こずっていた筈だもの。……ただ、少し判断が鈍る場面があったわ。三匹に囲まれた時、一瞬動きが止まっていたわね?」
「すいません……」
「まあ、本当に一瞬だったけれども。……常に全体を俯瞰し、敵が次にどのような行動をするかを想像しなさい。三匹に囲まれたのは、貴方が他の一匹に夢中になって突進して行ったからよ」
「はい。ありがとうございます!」
「それで、ヴォルター。貴方の魔法は中々面白かったわ。威力はそこそこ。攻撃範囲も十分広い。……ただ、範囲を指定できると良いわね。術式に、風魔法で調整できる要素を組み込むのはどうかしら?」
「ありがとうございます。……範囲の指定です、か。今日帰ったら、すぐにでも検討します」
「よろしくね。さあ、先に行きましょうか」
そして私たちは、更に森の奥へと進んで行った。




