執行官は、観光をする 2
「こちらが、官棟です。官棟は、読んで字の如く領官たちが働くための場所です」
高い。……議事堂が横に広いのに対し、官棟は縦に長い建物だった。
「それぞれの階ごとに、一つの部署が入っています。まず、一階は造営。主に公共の設備を整えたり等々、街づくりをするための部署ですわね。後はそこから派生して、交通整備や物流なんかもこの部署が対応しています」
所々から、怒号が飛び交っている。
「さて、次が衛生。主に公衆衛生の対策を考えたり、病が流行った際には方々にある病院や診療所と連携し、その対応を行う部署ですね」
「ん?」
「どうかされましたか?」
「病院とは……?」
「ええっと、王都には病院はないのでしょうか?」
「恐らく……」
もう何が来ても、もう驚かないだろう……と議事堂を見て思ったのだけど、全然そんなことはなかった。
「実際にご覧になられた方が分かり易いでしょうね。今度、ご案内致します」
「ありがとうございます」
「さて、次が教育ですね。読んで字の如くですが、主に子どもたちの教育に関連する業務を担っています。一例ですが、幼稚舎・中高等舎の授業要領を決めることとかですね」
「度々すいません……幼稚舎・中高等舎とは何でしょうか?」
「学校です。この領地では、七歳から十歳の子どもが幼稚舎で学び、十一歳から十五歳の子どもたちが中高等舎で学びます」
「えっと……まさかですが、領地の子ども全員ですか?」
「ええ、そうですよ。流石に更にその上にある学術院と職業専門校は希望した子どもしか入りませんが」
「ええっと……」
ダメだ、もう混乱して頭が動かない。
今日だけで、どれだけ衝撃を受けただろうか。
まず、基本平民は学校に通わない……と言うよりも、そもそも学校なんて王都にはある魔法学園ぐらいしかないので、その機会すらないというのが正しいだろう。
貴族だとて、基本、家に家庭教師を呼んで勉強しているぐらいだ。
だというのに……一体、この領地は何なのだろうか。
領民全員が、学園に通える?
そんなこと、聞いたことも見たこともない。
「ディアナさん、大丈夫でしょうか? お疲れのようでしたら、案内は後日に……」
「……大丈夫です。ええ、本当に」
クリスティンさんの心配に、もう乾いた笑みしか返せなかった。




