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これからもよろしくお願いします!!!


「どうやっておばあの場所を探すの?」


 2人は家を出て薄暗い道を歩く。無駄にしなやかに歩くローラの背中に、アテナは疑問をぶつけた。


「そうねぇ。私がおばあ様を調査する裏の人間なら、こう考えるわ。満足に動けない、ドブル覚醒剤を作れる人間がいる。しかも、いてもいなくても誰も気にしない、スラムの人間だ。攫わない手はない。ん?その側には、将来美人になりそうな、魔法の才能があるやつがいるじゃねぇか。ババアがいなくなったら、その焦りや孤独に漬け込んで、コイツも頂いちまおう、ってねぇ。」


「サイテーね……」


「もっと悪い事も考えてるでしょうね…。とにかく、私はこう思うの。たぶん、おばあ様をさらったその一味の人間が、この辺でアナタが1人になるのを見張ってるんじゃないかしらぁ。それに、さっきここにくる時にも、イヤーな視線を感じてたのよねぇ」


「そうなんだ……でも今は誰も……」


「そうねぇ。まぁでも、丁度いいわ。さて、アテナちゃん。ここで体験授業の時間よぉ。レッスンワンってやつかしら。私の手元を見ていてねぇ」


 そういうとローラは右手の中指と親指を合わせた。俗に言う、指パッチンをするための形だ。自分の魔法を掻き消されたのも指を弾いた後だったことを思い出したアテナは、ローラの指先に意識を集中させた。


 どんな大魔法を繰り出すのか、というアテナの予想と裏腹に、指先に集まった魔力は僅かであった。アテナなら、何十回でも行使できるほどの魔力量だろう。たったこれっぽっちの魔力で何をするのだろうか、そうアテナが疑問に思ったその時。



   パチン。


 

 と、この薄暗いスラムには似つかわしくない、どこか可笑しささえ感じる音がした。が、効果は目を見張るものがあった。


 指が鳴った刹那の瞬間に、指先に集まっていた魔力が極めて薄い風船の様に、ローラの指を中心に拡がった。アテナも、目では見えなかったが、魔力の風船の膜のような物が自分を通り抜けて行くのを感じた。何をしたのかとローラへ聞こうと思ったが、


「みぃつけた」


 という呟きを残して、ローラは消えた。ローラが立っていた場所に土埃が立っていることから察するに、どうやらアテナの肉眼では確認できないほど高速で移動したようだ。本当に、彼は何者なのだろうか。いや、魔法が使えるから、彼女……なのか?


 などとアテナが考えていると、ローラが男を担いだ状態で1つ先の角を曲がり、戻ってきた。アテナの目の前まで来たローラはドサリと肩の男を地面に転がした。気絶した状態で手足がロープの様なもので固定されている様だ。


「私の魔力探査に、コイツの持ってる通信用魔具の魔力が引っかかったわ。スラムの人間がこんな高価なもの持ってるわけないもの。 コイツからおばあ様の情報、聞き出すわよ。」


「さっきの風船みたいなやつが、魔力探査ってやつ?」


「そうよぉ。ほんの少しの魔力を、薄ーく薄ーくのばして周囲に飛ばすの。周囲の形とか、魔力を持ってるものが分かるわぁ。アテナちゃんならもうちょっと練習すればできるようになるかしら」


 原理はアテナにも理解できた。だが、ローラの魔力操作の精密さには舌を巻いた。魔力の薄さもさることながら、全方位に全く同じスピードで、あれだけの速さで魔力を飛ばすのは、至難の業である。


「ホラッ!起きなさい!」


「んぇ…?はっ!悪魔!!」


「誰が悪魔よ!また気絶させるわよ!!…アンタ、この子のおばあ様の居場所、知っているでしょう。教えなさい」


「フン、誰がお前なんかに……ギャァァアアアア!!耳が!!!耳がぁああ!!!!」


「私達急いでるの。素直に教えるのが貴方のためなのよ?のっぺらぼうになりたくなかったら、さっさと吐きなさい」


 ローラは男の右耳を千切っていた、かのように男は感じていたが、実はこれ、幻覚魔法の一種である。男は手足を縛られており、目視も出来ないため、自分の耳が今付いているかどうか確認する術を持たない。ローラが男の耳を千切ったかの様な感触と、痛み、血の幻覚を与えた為、男は自分が耳を千切られたかの様に感じたのだ。加えて、ローラの服装や口調の異様さが、男には狂人の様に思え、本当にのっぺらぼうにされるまで頭の部位を千切られるのではないかという恐怖感も植えつけていた。

 ちなみにローラは本当に千切っても良かったのだが、アテナに無駄な血を見せたくなかった事と、自分の服が血で汚れるのが嫌だったため、この方法を取った。


「痛ぇ……痛ぇえよぉ………!!!」


「ドブル覚醒剤はその数倍の痛みが全身を襲うわよ。もう一度言うわ。誰がおばあ様を攫ったの?」


「勘弁してくれぇ……俺はそのガキが1人になったらある人に連絡する様言われただけなんだよぉ……バラしたら、俺が殺されちまう………痛ぇえぇ……」


「はぁ……。ごめんねアテナちゃん!コイツハズレだったわぁ!今惨たらしく死ぬか、後で惨たらしく死ぬかだったら、今惨たらしく死ぬのを選ぶんだってぇ〜変わった人ねぇ!!」


 ローラが聞き出す様子を横から見ていたアテナは寒気がした。あの整った顔は、無表情になるだけで、こんなにも冷えきった印象を与えるものなのか。ローラから溢れる魔力は怒気を孕んでおり、殺気立っていた。本当に今まさに男を殺してもおかしくない程禍々しい魔力が迸っていた。仲間であるはずのアテナさえ、その場から逃げ出したかった。この魔力を直接浴びているあの男にはどれだけの圧力がかかっているのだろう。


「ひぃぃいいい、話す、話すからぁ!!!」


 と、やはり男も観念した。


「ガルフだ!!ガルフファミリー!!アイツらに頼まれたんだ!!多分、ソーホー街のアジトにババアはいる!!嘘じゃねぇ……嘘じゃねぇ……」


「ふーん…」


 男はブルブルと震えていた。ローラは興味を無くしたように男からアテナへ視線を移した。


「ガルフファミリーだって。最近この辺りで幅を効かせてるとは小耳に挟んでたけど、人攫いから薬の売買まで手をだしてるとはねぇ……」


「乗り込むの?」


「そうよぉ。私、チンピラじゃあどれだけ束になっても敵わないくらいの強さはあるのぉ。油断じゃなくて、客観的事実よぉ。まっすぐ行って、そのまま助けて、帰ってくるわぁ。あ、私おばあ様のお顔を存じ上げないから、アテナちゃんも付いてきてねぇ。大丈夫、指一本触れさせないからぁ」


「すごいね……」


「アテナちゃんも直ぐにこれくらい出来るようになるわよぉ。おっとぉ、ごめんなさい、一本魔話入れなきゃ」


 魔話とは、通信用の魔具の一種である。それぞれの魔話端末に固有の番号が割り振られており、その番号を用いて特定の相手と通話出来るものでたる。魔話端末ら一般的には腕輪の形をしており、女性なら腕から魔力を流すか、男性なら魔池を用いて使う。勿論ローラは腕から魔力を流していた。


「あ、もしもしぃ?リンツぅ?アタシよぉ、ローラぁ。お願いがあるんだけどぉ、50人くらい縛れるロープを持ってきてほしいのぉ。うん。うんうん。そう!場所はねぇ〜ソーホー街のガルフファミリーのアジトぉ!そうなのよぉ。成り行きでね………うん。ありがとねぇ。それじゃまた後でぇ。ばあぁい」


 ファン、という音とともに魔話が切れた。


「今の、誰?ご、50人分のロープって…」


「私の1番弟子のリンツよぉ。後で紹介してあげるわぁ。それより今は、おばあ様よ。ガルフのアジトまで、急ぎましょう」


「……うん」


「あ、あとそういえば。ねぇ、そこのアナタ」


「は、ハイ!!なんでしょう!!!」


 ローラは徐ろに倒れているた男に話しかけた。


「アナタ、私達に情報を喋ったら、アナタがファミリーから殺されるとか言ってたじゃなぁい?でも、もうその心配要らないわよぉ」


「は、はぁ……なんででしょう」



()()()()()()()()()


 アテナはこの言葉が現実のものとなるのを、目の当たり

にすることになる。

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