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Reakt von Licht: Opticks (光の反作用:光学)

キイツは、崖となった地面から、落ちそうになったユキの手を握っていた。

足元が不安定で、ユキを救いあげる事は難しかった。


今ここで、手を離せば自分は助かるのだろうと理性では分かった。

幸い、下は柔らかい砂浜だし、ユキが重傷を負う事もないだろう。自分の安全が確保できてから、救助を呼べばいい。

けれど、もう二度と手を放したくなかった。自分がクリスの手を離した時の様に。


自分の足元が崩れ落ちる瞬間、ユキと共に落ちる決意をした。そして、自分とユキは、崩れた斜面に投げ出された。

「大丈夫か!」

「ちょっと、足が痛くて歩けない…」


怪我をしたユキを背負って、自分は、崩れた斜面を登り始めた。だが、頂上に辿り着く前に、急な斜面に、足がすべって、元の位置に戻されてしまった。

諦めずに、登っては滑り、登っては滑り何度も繰り返す。まるでシーシュポスの様に。


ユキが背中越しに不安そうに尋ねた。

「ねえ、どうして、海が盛り上がっているの?」


分かっていた。津波が来る事は。波の音がすぐそこまで迫っていた。

キイツはユキの質問に答える代わりに、振り返って海の遠くを見つめた。一瞬だけ船が見えた気がした。


崖を登ろうとする自分達の元に、津波が訪れて自分たちは水に流された。

詩人キーツの墓碑銘の様に、名前すら残さずに。


Here lies one whose name was writ in water

その名を水に書かれし者ここに眠る


John Keats Epitah

ジョン・キーツの墓碑銘

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