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Conquer all mysteries by rule and line, (あらゆる神秘を、法則と線とで支配し)

高校卒業後、自分は関西の私立大学に入り、そこで教員免許を取った。

ゼミで文学をもっと学びたいという気持ちがあったが、それよりも、子供達に詩のすばらしさを教えたかった。かつて、自分に詩を教えてくれたクリスの代わりに。


在学中に、キーツやワーズワースが生きたイギリスや、キーツが亡くなったイタリアに行った事は忘れられない思い出だ。

イタリアでは、中部の小さな田舎町へも行った。クリスの親戚のアクアがいるかもしれないと思って。

手がかりは見つからなかった。小さな地震の犠牲者たちが酷く気になった。



そして、2011年3月、大学卒業の記念に、森鴎外や夏目漱石といった明治の文学者が集まった東京の本郷周辺を観光する事にした。自分は司馬遼太郎の『街道をゆく 本郷界隈編』を片手に散策していた。



まず初めに訪れたのは、本郷というより池袋に近い雑司ヶ谷霊園だった。

ここには夏目漱石、泉鏡花、永井荷風などの文人たちが眠っている。創作では、『こころ』のKが埋葬された地としても有名だ。

各々の文人たちを訪ねた後、最後に、小泉八雲の墓に花を捧げ、自分はその地を跡にした。



その後、東大についた自分は、三四郎池などを回った後、図書館で貴重な書物を読み漁った。

しばらくして東大を出る時、変なモニュメントがあった。説明書きを見たが、地震がどうのこうのと書いてあり特に関係ないと思い、スルーした。


鴎外記念館にも立ちよった。鴎外のほかの作品はあるのに、『ファウスト』の翻訳がないことが不満で、自分は係員に要望した。

「ファウストは有名やし、きっと外国の方にも評判がいいと思うんや」

係員は、検討してくれた。いつか訪問した人が、森鴎外訳『ファウスト』を手に取ることを想像すると心が弾んだ。




昼下がり、本郷の静かな住宅街を歩いている時、大きな揺れが襲った。

大地震だと、分かった。


揺れが収まってから、周囲を確認した。

家が燃えているのが見えた。

女性が助けを呼ぶ声が聞こえた。中にまだ人がいるらしい。

周りには誰もいなかった。

火の回り方からして消防車は間に合わないだろう。


クリスの時と同じく、炎が生命を奪おうとしていた。


自分は燃えている家に

・飛び込まない

・飛び込む


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