Fall of Hyku-union : A fragmental dream(滅びた俳句の調和:夢の欠片); Book 1: The winter rainbow- / 冬の虹
自分は、クリスについていかないことにした。
「なんや、なら一人で行こう」
そう言って、クリスは去った。
クリスが去ってから、しばらく松ぼっくりを見つめていたが、何も思いつかなかった。
冬休みの終わりに近づいたが、なかなか良いアイデアが浮かばず、自分は何の変哲もない松ぼっくりの絵を描いて提出した。
冬休みが明けて学校が始まったが、自分の絵は表彰される事もなく、クリスの詩も無難なもので入賞する事もなかった。
ある日の帰り道、クリスがふと言った。
「キイツの絵、入選しなかったなあ。やっぱり、あの日出た虹を書いたらよかったんや。キイツだったら、綺麗に書けたのになあ」
「そうなんか。また、虹出てくれへんかなあ」
「明日、公園に行ってみいへん」
「せやな」
そんな軽い約束をして、いつもの様に家に帰って寝た。
その夜、大地震が起きた。壁が崩れて額に直撃した。その瞬間、自分は永遠に意識を失った。
意識を失う直前に見たのは、冬の海岸で、松と虹を背に詩を口ずさむクリスの姿だった。
別に、無視して暖かな眠りについてもよかった。
けれどクリスの顔は寂しそうで、いつの間にか松は枯れはて、詩は聞こえなくなった。
それが嫌で、右手を伸ばしたが、クリスには届かなかった。
And that is why I sojourn here,
それ故に今、私はここにいる。
Alone and palely loitering,
私は青ざめ独り彷徨う。
Though the sedge is withered from the lake,
湖のほとりのスゲはしおれ
And no birds sing.
鳥は一羽も歌わない。
"La Belle Dame sans Merci"
『つれなき美女』
John Keats
ジョン・キーツ
…これは夢。
あの日、クリスに会わなければ良かったと思った夢。
けれど、それはもっとひどい悪夢でしかなくて…
自分は、夢から目覚めなくてはならない。




