At the mere touch of cold philosophy? (冷たい科学が、ただ触れるだけで)
自分は、神戸で生まれ育った。ごく平凡な家庭の子供時代。
無邪気で、ありふれた日常が続いていた。
小学二年の冬休みのある日、自分は、机の上に置いた松ぼっくりを見つめていた。
実際に見た”自然”の絵を描くという図工の宿題だったが、いい題材が見つからず手つかずだった。
「キイツ、何してるん?」
そんな時、隣から声が聞こえた。近くに住んでいた幼馴染みの青葉栗須だった。二人で算数の宿題を終えた後、それぞれ残っていた宿題に取り掛かっていたのだった。
「クリスか。今、図工の宿題でいそがしいんや」
しかし、自分の握った色鉛筆は一向に動かない。
「なあ、さっきから何もかいてないやん」
「…うーん、良い絵が思いつかへんのや。クリスは何を書いたんや」
クリスが見せてくれた絵は、赤い丸い物体から緑の線が出ているものだった。
自分は首をかしげながらたずねた。
「…梅干しに芽が出たんか?」
「どう見たってバラやないか!」
クリスは怒りながら反論した。
「いやバラには見えへん。バラやとしても病気のバラや」
そういうと自分は、さらさらとバラの絵を描いた。葉を食べている虫も添えて。
「こんなキレイな絵をかけるのに、良い絵が思いつかへんなんてぜいたくやな…」
「せやけど、ほんまに思いつかへんのや」
「なら、海浜公園に行かへん」
クリスは窓の方を眺めた。冬の寒い空にあたたかな光が舞い込んでいた。
自分は、
・クリスについていくことにした。
・クリスについていかないことにした。




