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Altera Solutio:Ave Verum Corupus (別解:めでたし真のコルプス)

Ave ave verum corpus

めでたし真のコルプスよ

natura privari sua vita

自然により、生命を奪われた者よ

vere passum, immolatum

犠牲となり、真の苦しみを受ける

in maris pro me

海で、私のために


Aequivalet solutio aequatio

これと等価な方程式の解


cujus pedes sectum

その足を切られ

aqua fluxit et sanguine

私と血とが流れ

Esto tibi praegustatum

私が前もって

in mortis examine.

死の裁きを受ける






………だから?


私は今まであなたが救える可能性を探していたが、一体、可能性が見つかった所で、何が変わる?

既に起きた事象は覆せない。

タイムマシンを造ればいい?

造る事自体がそもそも不可能かもしれない。

もし時間旅行が出来ても、あなたを奪った運動量保存則の代わりに、歴史の改変を修正する歴史保護則によって、どうあがいてもあなたの死だけは不変かもしれない。

また、エヴェレットの多世界解釈が正しいのなら、もし私があなたを救う事ができたとしても、それは、あなたが救われる平行世界に移動しただけで、他の平行世界では無数のあなたが死んでいる。

無数の私が別の平行世界で苦しみ、死ぬのは構わない。

だが、目の前のあなたが笑っていても他の世界のあなたが苦しむのなら、それは救済でも何でもない。ただのエゴだ。


Hypotheses non fingo

我は仮説を造らず。


そう、仮説に意味はない。それも未来ではなく過去の仮説など、尚更だ。


過去を変えられない事は分かっていた。ただ、理由が欲しかったのだ。

原因究明の果てに、私は全ての束縛条件から放たれ、プラトンの洞窟から抜け出した。

そして、真なる理性の目で何でも見れるはずだった。

しかし、そこには見たくもない現実と、意味の抜かれた形式しか残っていなかった。

無意味だ。バイアスという殻が懐かしい。

原因究明など程々にして曖昧に誤魔化し、現実(死)と希望(生)を重ね合わせた二重思考をする事が真の解だったのか?


この調査に伴う資料の中には、被災者の伝記などもあった。

何もしたくなかった私は、それらを適当に開いては読んでいた。

そのほとんどは、あまり救いが無かった。私が陥ったよりも更に悲惨な状況は多々あった。私の不幸など、比較すれば大したことはない。


私は冷たい(Frigidus)性格だ。

しかし、ルクレティウスの様に、


Suave, mari magno turbantibus aequora ventis

大海で風が波を掻き立てている時、

e terra magnum alterius spectare laborem;

陸の上から、他人の苦労を見るのは面白い


と思うほど残酷(Crudelis)ではなかった。


”自然”災害の悲惨さは知っていた。

けれども、それは所詮、外延的理解であり、時間、座標、死傷者数等を表にまとめたものを知っているだけだった。

今は内包的に理解した。これが真なる知識の重さなのか。直視しなくても、周りの場を歪ませるほどだ。

中には、私よりも酷い目に遭いながら、前に進んだ者もいた。それには勇気付けられた。

だが、私は停止してしまった。私の運動量はゼロ。動く事ができない。理性では分かっているのに、一歩も動けない。

絶望は比較できない。∞(無限大)でさえも、ℵ0(アレフゼロ)、ℵ1(アレフワン)と比較できるというのに。

私の心は真性特異点へと落ち込んだ。何よりも速い光すらもそこからは逃れられない。

もがいても引き寄せられて、事象の地平線で粉々に砕かれ、残骸は高重力によって、押しつぶされた。


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