Definitio Ⅵ:Mensurae problema(定義Ⅵ:観測問題)
隔壁は完全に閉じた。
一つだった空間は二つに区切られた。
生と死の空間に。バラストという死んだ物質(corpus)の代わりに生きたCorpusが沈んでいく。
質量としては等価だが、それ以外は何も等しくなかった。
量子力学では、観測していない時、事象は決定していない。
コルプスが質量だけ置きざりにし、壁をトンネル効果で突き抜けてこちらに来る事ができれば…
警告ランプの明滅と深度計が視界に入る。
もし、ランプの明滅がやめば、潜水艇が危険深度を過ぎ、安全深度に戻った事、裏返せばあなたの死を意味していた。
ランプの消灯=あなたの死
私は目を閉じた。そうすれば、ランプが消えたかどうかは不明だ。つまりコルプスは半死半生のはずだ。
闇に覆われた中でブザーの警告音が鳴り響いていた。…観測するという行為は、光だけではない。音も重要な観測要素だ。
警告音の停止=あなたの死
耳も塞がなくてはならない。私は耳も塞いだ。
何も見えない、何も聞こえない。ただ自分の心臓(cor)の音だけを感じる。
私の鼓動? 私の生きている証拠……私の生……私の生はあなたの死が原因で、私の死はあなたの生の結果だ。
私の生=あなたの死
ならば、私の生きている証拠の観測を、つまり心臓の鼓動を止めればいい。
私は、耳をふさいでる手を離し、目を開けた。
まだブザー音は鳴り響き、ランプは明滅を繰り返していた。
まだ間に合う。私は、近くにあった工業用のナイフを手に取り、胸に向けた。
・鼓動を止める。
・鼓動を止めても…




