Definitio Ⅲ:Terrae Motus(定義Ⅲ:地震)
突如として大地震が起こり、潜水艇は岩に叩きつけられたのだった。
すぐに、コルプスはアクティオの状態を確かめた。
スクリューがちぎれたが、船体は大丈夫な様だ。空気の循環装置も正常に動作していた。窒息の危険はしばらく無いだろう。
当座の安全を確かめると、フローティング・ブイ・アンテナを射出し、救難信号を発した。
その間も、アクティオはゆっくりと沈み続けていた。
コルプスは緊急浮上するため、バラスト投下ボタンを押した。これで浮上するはずだ。
そう思い、コルプスは窓から外を見た。
コルプスは小首をかしげながら唸っていた。
「うーん。一面、水だらけで沈んでるのか浮かんでるの分からない。まるで、アインシュタインの等価原理みたいで興味深い」
そんな事をいうコルプスに少しホッとしつつも、私はツッコミを入れた。
「何、呑気な事をいってるんですか。水深計を見れば分かるでしょう」
仕方なく水深計を見ると、依然として沈み続けていた。投下装置の故障で、一部のバラストは投下されなかったらしい。
「アクア。装置が故障して、バラストが投下できないんだ。故障箇所を探してくれ」
私がコルプスの元へ来たときに、合流予定だった探査船ちきゅうからの連絡が来た。
「こちら、探査船ちきゅう。
貴艦と合流予定だったが、中止する。
現在、大地震が発生して、直ちに救助には向かえない。
津波も起きる危険もある為、自分達はこのまま沖合いに出る。
救助隊にも連絡を出すが、他の救助を優先して、多分すぐにはこれないだろう。
とにかく、緊急浮上して、救助信号を発信し続けてくれ。どんなに遅くなっても助けに向かう。
すまない。健闘を祈る…」
終盤の方は、ノイズが増え、ついには何も聞こえなくなった。潜水艇に引きずられてフローティング・ブイも沈み、電波を受信できなくなったからだろう。
その返答を聞いた私は、まず酸素の残量を確認しにむかった。
多くのボタンの中に、黒いボタンと白いボタンが並んでいた。二つのボタンの上にテープが剥がれた跡があった。おそらく、コルプスが忘れないように張ったラベルが剥がれたのだろう。
酸素の残量の確認は、黒いボタンでできたはずだ。
・黒いボタンを押す。
・白いボタンを押す?




