DefinitioⅠ:Lacrimosa Dies Illa(定義Ⅰ:涙の日)
アクア・ディエス(Aqua・Dies)は独りだった。その事実を否定するものは何一つ無かった。
山積みの本と資料。
一部は崩れ、不安定な平衡を維持している。
破かれた大量の本のページ。
無数の数式が書かれている。
静止したニュートンのゆりかご。
歪んだ16進数表記の15パズル。
砕けた正二十面体。
血と涙に塗れた『日本沈没』。
演算を繰り返すコンピューター。
そのどれもが、私が独りである事実を否定できなかった。
否定的証拠に囲まれながら、私はただ一つ残ったポーンを見つめていた。
それはクイーンになり、コルプスにチェックメイトをかけた駒だった。
否、それ自体であったかはわからない。元々、この駒は区別不可能だ。
もし、装飾によって個々の区別が出来たとしても、チェスのルール上は8つのどのポーンも等価でしかない。
自然の”ルール”におけるcorpus(物質)とCorpusの様に。
Natura magna spolient existentia maximus. Quid faciam?
偉大な自然が大切な存在を奪った。 どうすべきか?
この命題の証明は”涙の日”に始まった。
Lacrimosa dies illa,
涙の日、その日は
qua resurget ex maris
深海から昇った日
judicandus homo reus:
罪人が裁きを受けるために
mihi ergo puni populus.
人々よ、私を罰せよ
pie Natura Domine,
慈悲深き主、自然よ
Dona tibi requiem. Amen.
あの者に安息を与え給え




