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第十話 『コミュ力0と100の争い』

 ナツキは俺やトウマとは中学時代からの仲であり、クラスも同じことが多かった。だからこそ、それなりに彼女のことは知ったつもりだった。


 そう、ナツキは空気が読めないわけじゃない。むしろ空気を読むのは得意な方だ……と、思っていたのだが。


「え……い、いきなりなんですか」


「ん? おはようって挨拶しにきたんだよ!」


 一見朝の会話をしているただの友人、にしか見えないのだが……。


 生憎、俺の内心はそんな穏やかではなかった。それは当然、この現状を直視しているトウマもだ。


「お、おいサク。これどーする? やべぇよな」


 なんで少し楽しそう何だこいつ。なんでこっちチラチラ見ては笑み零してんだこいつ。

 前言撤回。こいつは事態を全然理解していない。

 俺は横目でトウマを見て、もう一度視界をナツキ達の方へ戻す。


「楽しそうだけどな、お前この現状分かってるよな」


「いやぁ、大丈夫大丈夫。ナツキと何年の付き合いだよ」


「そうだよ。何年の付き合いかだからこそ、ナツキはどうすると思うよ」


 俺が言うと、トウマは顔つきを少しだけ神妙にする。悪ノリが過ぎたという反省の意味も込めて、ここは大人しく従ってくれたようだ。


 そして、トウマは納得が言ったように俺の方を見て、少しずつ笑顔がぎこちなくなっていき、


「やっぱやべぇわどーしよ」


 苦笑いでそう結論づけた。悲しいことに、今回はナツキへの信頼はゼロだ。

 しかし、そこで俺たちが介入出来るわけもない。机に座ってハラハラ見守るだけだ。


「あ、あの……要件があるのなら教えてください。もし宿題とかなら……すぐ用意しますので」


 そう言ってサキはバックの中身を取り出そうとする。もう宿題は終わっているというのだろうか。毎回友達に見せてもらう俺からしたらこの小さなことにも少し驚かされてしまう。


 お目当ての宿題が見つかり、サキが取り出そうとしたところでナツキが慌てて静止した。


「違う違う。そーゆーつもりで近づいたんじゃないよ! さっきも言った通り、挨拶しにきたの!」


 そうナツキが言うと、サキは困ったように表情を曇らせる。だが、サキは今までのようにナツキに壁を作った。


「ああ、そうですか。でしたら用件は済みましたよね」


 淡々と、一流顔負けの演技でサキはそう言う。だが、遠回しに立ち去れと言われるも、ナツキは一向に引こうとはしない。


「せっかくこんな機会があるんだし話そーよ。ねーサキちゃん!」


「はいっ!?」


 弾けるようにサキは顔を上げる。


「ちょ、ちょっと。いきなり名前で呼ぶなんて迷惑です!」


「え? なんで迷惑なの? だって可愛い名前じゃない。ねぇ、サキちゃん!」


「え……いやあの……」


 笑顔と屈しない精神力にサキの言葉は弱くなる。平然と、サラッと詰められた距離を広げることはなかなか難しいようだ。


「ほ、本当になんなんですか。冷やかしにしてはタチが悪いですよ」


 依然としてナツキが冷やかしというような悪意のある行動をしていると考えているサキ。だが、ナツキにはそのような悪感情はない。あるのは本当に正直な気持ちだけだろう。目がそれを物語っている。


「頑固だなぁ。さっきも言ったけど、本当に仲良くなりたくてきたの。ほら、サクとさっきも話してたし。私も仲良くなれるんじゃないかなぁって!」


「話してたって……挨拶しただけじゃないですか」


「挨拶も立派な会話! つまり話してたのとおんなじ!」


 頑固者はどっちなのか。よく分からない持論を立て並べ、ナツキはあれやこれやと逃げ道を無くしていく。そんな押しの強さにサキが対抗できるはずもなく、どんどんと詰め寄られてしまうが、


「ほらお前ら席つけー。今日はプリントめっちゃあるからスパスパ終わらせんぞー」


 チャイムが鳴り響き、松下センセが気だるそうにやってきた。あぁそうか。一時間目は国語総合だったか。

 チャイムという逃げ道が途端に現れ、サキは転がり込むようにそれに乗じる。


「で、では、チャイムも鳴りましたし……」


「うーん名残惜しいなぁ。でも、そうだね。じゃ、また後で!」


「え」


 また後という言葉に顔を青ざめるサキ。逆にナツキは御満悦だ。

 仲良くなれたと思っているのだろうか。こちらを見てはドヤ顔ピースを向けてくる。しかし、俺とトウマは愛想笑いで返すしかない。


「ナツキつえー……」


「本当にそれ」


 思わず出てしまった俺の嘆息に同情の声でトウマが乗っかる。斜め前のサキの視線がとても痛い。恨まれてる気がして仕方が無い。


「あいつが追いかけて、佐倉が秒で逃げ出す未来が見えたわ」


 そんなサキと俺のリアクションを見て、トウマはそうこぼす。それについては俺も同意で、それでも執念深く探し出すナツキの姿まで見える。


「そういうことに関しちゃ、お前とナツキは似たもん同士だけどな」


「どういう意味だてめぇ」


 ナツキを横目にトウマは鼻で笑う。隙あらば小馬鹿にするのはこいつの一種の特技なのだろうか。俺が突っ込もうとした瞬間、


「そこうるせぇぞ!」


「「いっだぁ!?」」


 無駄話をしていた俺たちに、プリントを運びに来ていた松下が何かを投げてきた。あぁ、輪ゴムだ。それが見事にヘッドショット。

 俺とトウマは思わず額を抑える。


「いってぇな! 体罰だろこれ!」


 今度はトウマが輪ゴムを弾く。が、思うように飛ばず手前で落ちてしまった。

 それを松下が手に取り、指先で遊びながら話を続ける。


「授業が止まる可能性があったから正当防衛としとくな。あと、次ふざけたらゲーム機折るぞ」


「おし、サク。大人しく楽しい授業を受けようぜ」


「お前のゲームに対する優先順位の高さなんなの……」


 俺は呆れてため息をつきながら輪ゴムを弾く。思いのほか良く飛び、松下が上手くキャッチした。


「お、ナイスパス秋野。そんじゃ、プリントに書いてある教科書のページ開けー」


 松下は回れ右をし、教科書を開いて教卓へと向かう。

 ここで何かアクションをしては俺までさらなる巻き添えを食らいかねるので、手渡されたプリントを見ながら教科書を開いた。


「おっし。今度こそ、授業を始めるぞー」


 気だるげな声が、教室の空気をさらに緩くさせた気がした。

一ヶ月放置が日課なのかなってくらい放置プレイしてますよねほんと申し訳ございませぬ。

まぁリアルが忙しいとかいういつも通りの言い訳を貫くわけですよ。反省してる後悔はしてない精神で行きます。


最近めっきり寒くなってまいりましたね。帰ってきて家の暖かさに涙を流す日々です。ちなみに急な温度の変化で自分毎日鼻ティッシュ詰めてます。両方。ええ、両方。


てなわけで次回もお楽しみに!

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