テリー見参
匂いの元へ急ぐ!!
そして到着した先に見たのは逃げ惑う人々の中で
武装した騎士達に取り囲まれる一匹の黒い龍。
「城へ向かわせるなーー!!」
「倒せーー!!」
怒号が飛び交い一斉攻撃が黒龍を襲う!
「ガラァーーー!!」
雄叫びを聞きその場の全員が此方を振り向く。
「勇者様ーー!!」
俺の到着に歓喜に包まれる騎士達!
しかしその歓喜の声をかき消すように土埃の中から
雄叫びを上げながら無傷で現れる黒龍。
ていうかテリー!!
見た目は全く違うが長年一緒にいた
匂い、感じ全てがテリーだ。
「テツーー!!」
「テリー?何で!?」
周りから聞けば怪物同士が声を上げながら
戦っている様に見えているだろうがこんな感じの
間抜けな会話が交わされていた・・・
しかも俺を知らない街の人達は怪物が二匹現れた
事によりこの世の終わりみたいな顔をしている。
でも何とかこの場を収めないと・・・
テリーに軽く耳打ちする。
軽く叩くからやられたフリをしてくれないかと。
「何で?」
「何でも良いから」
「うーん分かった」
テリーが承諾してくれたので軽く前足で
テリーを殴る!
龍の鱗って相当硬いな・・・
何て思っていると
おいおいテリー君!!
何かの遊びと勘違いしたのかもの凄いスピードで
地面と平行に民家を薙ぎ倒しながら城に向かい
飛んで行く。
「グァーーー!!やられたーー!!」
そんなふざけた台詞を残しながら
飛んで行くテリー!
「今の攻撃でそれは無理無理無理ーー!!」
「さすが勇者様ーー!!」
「弱い攻撃に見えて凄い威力だーー!!」
「怒りの雄叫びを上げてらっしゃるーー!!」
皆んな勘違いしてくれてるのは良かったけど
あの馬鹿やりすぎだろ!
急いで走り飛んで行ったテリーを追う。
「テリー!もうオッケーだからーー!!」
それを聞き城の城門だけを吹き飛ばし止まって
倒れ込むテリー。
城に突っ込まれたらたまったもんじゃない。
そんな事を思っていると城から続々と兵士達が
集まってくる。
ムーサ王まで出てきてるし・・・
テリーが動こうとするから前足で抑え小声で話す。
「もうちょっと待て」
ムーサ王に目配せすると理解してくれたのか
兵士に命令を出す。
「紙と墨を持ってまいれ」
「はっ!」
兵士の一人が返事をし急いで紙と墨を持って来た。
それを受け取り爪に墨を付け文字を書き
ムーサ王に見せる
「こ、の、も、の、は、ただ、いまより、な、かま
になった」
「何と龍を使役したのか!!」
「しかもあれはただの龍ではありませんぞ!
上位種の龍ですぞー!!」
「最強の勇者様だーー!!」
「我々は助かったんだ」
口々に声を上げる城の者達。
何とか誤魔化せた様だ。
「テリーもう大丈夫だぞ」
小声でそう言うとむくりと立ち上がるテリー。
「ひっ!!」
「うわ!!」
皆んな驚きを見せるが大丈夫だと紙に書いて
落ち着かせる
何とか納得させる事に成功しテリーと一緒に部屋に
戻る事にした。