馬車の中で〜ルシアside〜
ルシア視点です
平常心、平常心。。
広場のほど近くにある、ナディア様の店までの道のり、僕の心臓は痛いくらいうるさかった。
小さな寝息をたてながら僕の肩に頭を預けているエミリー嬢、僕の主人だ。
腕をからませるようにしているので、胸のふくらみが、僕の二の腕に当たっている。
ユニコーンの馬車はほとんど揺れないが、それでも振動のたびに意識せざるを得ない。
もうすぐ学園に上がる15歳だというのに、変なところは無防備な子供の頃のままである。
従者のことをどう思っているんだか、、今日だって着替えは覗くし、僕の匂いと似た香水を探そうとか言うし。
振り回そうとか、からかおうなんて気持ちもなく、そういう行動をとるのがエミリー嬢らしい。
12歳で己の気持ちを自覚してから、ずいぶんと我慢が上手になったと思う。
先日は、我慢しきれず抱きしめてしまったが、あれはエマも悪いと思う。
好きな相手に腕の中で「もっと欲しい」なんて言われたら、魔力のコントロールが乱れたって仕方ない。
僕は聖人君子ではないのだ。
「ん、、」
少し身じろぎをした、エマの顔が上向きになった。
「ルシア?」
そう呼ぶエマの声が聞こえたのは、都合のいい僕の幻聴なのかもしれない。
気づかれないように、僕は主人にキスをした。