部隊編成
俺は鋭い眼差しをこちらに向ける手寺紅葉を見た。
俺の発言に不満を持ったのか、あるいは驚いてそうしているだけなのか、分からないがいずれにせよ、彼女の目には妙に心を刺激する何かがあった。
困ったものだ。簡単に要件だけ伝えれば、あとは場の流れで、どうにか話はまとまると思っていたが、現実ではそうもうまくはいかないものだ。
彼女は依然、疑っているともとれる目でこちらを見ている。
ため息を一つつき、頭をかく。それから俺は紅葉に、言った。
「もう一度言うが、手寺紅葉、お前は俺らの部隊に入れ。まぁ、いきなり入れと言われても困るだろうから、取り敢えず返事は明日まで待つ。だが、あくまでこれは一時的な部隊過ぎないから、あまり深くは考えるなよ。」
すると紅葉は無言のまま、紅い髪を揺らし俺の前に歩み寄った。近くで見ると、彼女の背丈が妙に小さく感じる。やはりまだまだ子供だなと、思った。
「答えは既にあります。」
紅葉は上目遣いで妙に刺々しく、そう言った。
おっ!!
俺は心の中で驚きの声を上げる。
まさか、こんなにも早く彼女からの了承が受けられるとは……
俺はその次に来る言葉は入隊することだろうと期待した。
だが、何故だろう。俺を見る彼女の目に、何か背筋がゾッとする寒気を覚える。
しかし、それはこれとは関係ないことだろうと思い、
「ほう、では入るんだな。」
一先ず、蹴りがついたと思いながら、言った。正直、入ってくれなかったら俺はこの後どうしようかと考えあぐねていたところだ。
良かった、良かった…………
そんな中、紅葉は一度深く閉じた瞼を上げ、口を開いた。
「いいえ……違います。」
白赤い唇から、出た言葉は俺の思っていた答えとは違ったものだった。
「………えっ?」
俺は不意をつかれたかのように、口を開けたまま彼女に見入る。
「…その話、お断りさせていただきます。」
「えええっ。ちょっと待て、どうしてだ。」
俺は目を大きく開きながら、その言わんとする理由を尋ねた。
すると紅葉はその場で反転し、俺に背を向ける。その際ヒラヒラと舞う赤と黒のスカートの裾が目に入った。
「雫さん………てしたよね。」
「ああ………俺は雨夜 雫だ。」
彼女の言葉は何故か、しんみりとしていた。子供だからなのだろうか、妙に彼女の背中が小さく感じる。
「………私は強くないです。……私はまだ雫さん達と一緒に戦えるほど、力は無いんです。…」
言葉一つ一つに彼女のただならぬ想いを感じる。それはただお世辞で言っているのでは無く、おそらくはこれが彼女自身の本音なのだろう。
俺はなおも言葉を続けようと頑張る小さな背中を見ながら、ただ黙ってそれを聞いた。
「……話は嬉しいですが………私では皆さんの足手まといにしかならない………んてすよ。………私は弱いから……私は……私は私じゃあ……」




