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太陽と大地に咲く向日葵 ―異世界英雄譚―  作者: 灯月公夜
第一幕 【来訪者は血を流し決意を胸に抱く】(第一部)
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46.疑う根拠

本日3度目の更新


 場を沈黙が支配していた。

 しかし、向日葵は元々の目的を思い出して意を持ち直す。

 元々の目的。それは、太陽の身柄の安全性の確保だ。

 そのための情報を得るための会話であり、決して禁術や死者蘇生魔術についての話を聞きたかったわけではない。

 向日葵は大きく深呼吸をして気持ちを切り替える。そして再び清廉なる面持ちを浮かべた。


「死者蘇生魔術や禁術のことはわかりました。しかし、現在の論点はそこではなかったはずです。戻しましょう」

「おおっ、そうじゃったそうじゃった」


 ラティニオスが向日葵の言葉を受けて、わずかに口角を吊り上げた。

 油断ならない。それが向日葵の率直な感想だ。流石は三強の一角を担う大国のナンバーツー。向日葵は政戦を繰り広げながら、すべてラティニオスの手のひらで転がされているとひしひしと感じていた。

 しかし、それでも太陽の安全性は確保しなければならない。絶対に、何があってもだ。


「まずは情報の開示、誠にありがとうございます」


 向日葵はラティニオスの目を見てひとまずの礼を述べる。それにラティニオスは鷹揚に頷いて、「当然のことをしたまでじゃよ」と述べた。


「そこに虚偽の情報がなければいいのですけどね」

「対等な関係を築くためには、まずは信頼関係が大事じゃからな。協力は惜しまぬよ」


 これまでの会話でさんざん弄んできたのに、『信頼関係』が聞いて呆れる。しかし、そんな気持ちを必死に押し殺して、向日葵は清廉なかんばせを崩さなかった。


「では、その前提で話を進めさせて頂きます」

「うむ」

「先ほどラティニオス様は、我が従者である〈盾〉を『【屍姫】の間者かもしれない』とおっしゃられましたね?」

「そうじゃな」

「根拠を提示して頂いても?」

「よかろう」


 とラティニオスは自らの根拠を述べる。

 指を一本立てる。


「一つは、これまで屍鬼の森に赴いた者が、ほぼ例外なく惨殺されているにも関わらず、雨宮太陽殿は生きて帰還された。まず、これまでの事例からして疑うだけの根拠としては十分じゃ」


 続いて二本目の指を立てる。


「二つ、これは先ほども言ったが、致命傷を負った見ず知らずのモノを、王国の国宝とも言えるレベルの霊薬を用いて救ったかもしれないと言う可能性を検証し、限りなく可能性は低いと思ったからじゃ」


 トドメとばかりに三本目の指を立てる。


「そして、三つ。タイヨウ殿がダイチ殿たちと再会できたこと。これがおかしいのじゃ」

「何故です?」


 ラティニオスの三つ目の根拠に対して、向日葵は疑問を投げかける。

 ラティニオスの方でもその問いかけは正当であると認めているようで、すぐに解答を述べる。


「タイヨウ殿は申したはずじゃ。自分は【屍姫】の眷属であり下僕である、と。その眷属が敵である我が国に帰りたいといい、そして五体満足でタイヨウ殿がお二人の前に現れた、ということは【屍姫】がそれを許したということじゃ」


 ここまで言われて、向日葵の中でも不具合を認めた。


「おかしいじゃろ。何故、下僕を敵国に明け渡すのか。何故、それを許したのか。自ら言うのもなんじゃが、【屍姫】の我が国に対する敵対心は、憎悪すら凌駕していると考えておるぞ」


 ラティニオスが手を静かに戻す。


「これが儂が〈巫女〉様の〈盾〉が、【屍姫】の間者ではないかと疑う根拠じゃ」


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