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太陽と大地に咲く向日葵 ―異世界英雄譚―  作者: 灯月公夜
第一幕 【来訪者は血を流し決意を胸に抱く】(第一部)
44/48

43.決着

本日3度目更新。

 向日葵が切った最大のカードに対して、ラティニオスが口を開いた。

「それは脅迫かのう?」

「いいえ、警告です」


 ラティニオスの厳しい声に、向日葵は冷静に返す。

 そして、向日葵が反撃とばかりに口を開いた。


「そのような言葉が出てくるということは、我々を侮っているということですね? このような乳臭いガキに自害するような気兼ねはないだろう、と」


 向日葵が言い終わった瞬間、血が舞った。

 今まで目を閉じて静観していた大地が、衛兵から奪った剣で、己の腹部を貫いたのだ。

 大地の額から大量の脂汗が吹き出る。しかし、大地は歯を食いしばり、わずかに呻くに留めた。

 血の匂いが部屋中に充満する。

 大地の行動に、再び部屋がどよめく。そっちがその気なら本当に自害も辞さない。それを大地は行動によって示したのだ。

 これにはさすがのラティニオスも僅かに目を見開いた。

 大地が腹を剣で貫いたにも関わらず、向日葵は清廉なかんばせを崩さない。


「お分かりいただけましたでしょうか」


 その一声に、ラティニオスがわずかに息を吐いた。

 そして。


「……ならば、<巫女>さまは我が国に対して何を要求されるのかな?」


 それは一時的とはいえ、向日葵の勝利とも言える言葉だった。

 四強の一角である国から、譲渡の言葉を引き出したのだ。これを勝利と言わずになんというのだろう。

 向日葵は変わらず淑やかな笑みを浮かべ、清廉なかんばせのまま告げる。


「対等な関係を望みます」

「そちらのいう対等な関係・・・・・をお聞かせ願えるかな?」


 ラティニオスは相も変わらない口調で尋ねる。


「まず明確にしておかなければならないのは、貴国が我々を強制的に・・・・こちらの意思を無視・・・・・・・・・して、異世界に召喚した上にこの世界を救えと言ってきている点です。こちらの認識で齟齬はございませんか?」

「……それを否定すると後が怖そうだのう」

「では認めると?」

「アモルトス王国宰相として認めよう」


 ラティニオスが向日葵の言葉に深く頷く。


「では、詳細は後ほど詳しく詰めるとして、最低でも二つ、今ここで締結させて頂きたく存じます」

「よかろう。して、その二つとは何かの?」


 向日葵は静かに告げる。


「一つ、王国が我々を経済的・物的・人材的、またこちらの要求する支援に対して援助し続ける限り、我々はこの世界を救うべく行動いたします。これが破棄された際、我々はこの世界を救うことを放棄いたします」

「よかろう。異論はない」

「二つ、わたくしたち三人――笠原向日葵かさはらひまわり通称<巫女>、天宮大地あまみやだいち通称<矛>、雨宮太陽あまみやたいよう通称<盾>――における勢力の完全独立です。我々は完全に独立した勢力の立場から、貴国の要請に対等な立場から従い力を貸すのであり、故に貴国側から一方的に命令を受ける立場にはございません」

「なるほどのう」


 ラティニオスが豊かな髭を撫でる。そして向日葵の言葉を反芻する。

 向日葵の主張をざっくりとまとめると以下のようになる。

 <巫女>サイドを王国の勢力の一部として認めない。完全に王国とは別の勢力として力は貸すが、それはそちらが正式に要求したからであり、一方的な命令に従う義理はない。

 また、それ故にこちら側に意見なく勝手な行動を起こせば、それを契約の破棄として認識し、自害の上世界を救う手段を講じることをしない。

 要するに、こっちとそちらは別。上から命令するな。勝手なこともするな。勝手なことするならこっちにも考えがあるぞ。という意味になる。

 ラティニオスは表に出さず、内心でほくそ笑んだ。

 そして。


「よかろう。アモルトス王国宰相として、その提案に締結しよう」

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