35.疼く心
本日4度目の更新。
現在OVL大賞規約の10万字に間に合わせるため、クオリティと文量よりもスピードを第一に書いてます。そのため、とりあえずの区切りがついたら投稿してます。
つまり何が言いたいのかと言うと、今回の更新は今作で一番短いです。お許しを。
「太陽くんに変なこと言わないでよ。恥ずかしいじゃん」
「はっ、寝顔みられて恥ずかしいとか、まるで乙女みたいだな」
「乙女だよ! いや、流石に乙女は恥ずかしいけど、ちゃんと女の子だよ! 寝顔みられるとか恥ずかしいんだよ!」
王城の廊下。太陽の前ではいつものように、大地と向日葵が戯れていた。
向日葵が大地にお小言を言って、大地が向日葵をからかう。そして、それに怒った向日葵が顔真っ赤にして大地に噛みつく。
いつものように。そう、いつものように、だ。
一カ月と言う期間は、三人とって大した問題ではなかった。再会してしばらくしたらいつも通り。大地と向日葵は仲良く戯れ、それを見守るように太陽がいる。
いつものような、当たり前にあった日常。
しかし、一カ月で色々なことが違ってきてしまった。
大地と向日葵は一カ月共に訓練に明け暮れていたという。
二人でどうやって太陽を見つけ出すか、見つけ出してどうするのか、それをよく話し合っていたらしい。
ひるがえって、太陽は。
この一カ月の間、ずっと下僕としてある女性と共にいた。
女性の名はフェリクス・モーリス・イペリウム。【屍姫】と呼ばれる大魔術師――強力な屍鬼を眷属にする魔女だ。
魔女――そう、魔女なのだ。
あの優しく美しい笑顔の裏で、フェリクスは無辜の民を殺しては屍鬼の材料にしていたという。
信じられなかった。命を救ってもらったり、太陽のためにカレーを作ってくれたり、「いただきます」という言葉に感動してくれていたり。信じたくないと言う気持ちが先行してしまう。
しかし、思い出してみると。
太陽が半屍鬼となったのは、間接的とはいえフェリクスのせいだ。
大地たち再会した時に襲い掛かってきたのも、屍姫の眷属である屍鬼たち。しかもあれは明らかにバランスを考えた上での構成であり、大地たちを殺しにかかっていたのは確実だった。
それに――あの、冷たい声音。
まるで絶縁するかのように出ていけと言われた、あの時のフェリクスは温かさの欠片などなく、心の底が凍りつくほど冷たかった。
太陽は楽しげに言い争う大地と向日葵の後ろで、静かにため息を吐く。
もうどうしたらいいのかわからなかった。




