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太陽と大地に咲く向日葵 ―異世界英雄譚―  作者: 灯月公夜
第一幕 【来訪者は血を流し決意を胸に抱く】(第一部)
29/48

28.反撃(1)

本日5度目更新。

 護る。

 この想いだけで力が湧き出てくる。左手の紋様は灼熱の炎を持っている。痛くて痛くてたまらないが、これがあるから向日葵を護れるのだと理解する。

 全身が裂傷で痛い。しかし倒れるつもりは毛頭なかった。


「向日葵さん」


 太陽は茫然としている向日葵に声をかける。


「今から僕が全身全霊で向日葵さんを護る。だから」


 太陽は主の顔を思い出す。綺麗で高貴で、優しくてどこか危うい女性の面影を。

 それを振り払って、太陽は言う。


「まずはあの黄色の屍鬼、僕らで倒そうよ」



     ◆



 男子三日会わざれば括目して見よ。

 ふと向日葵の脳裏でその言葉が閃いた。

 一カ月も会わない間に、なんだかかっこよくなった。ボロボロで怪我だらけで、でもその背中はとても男らしい。今この時ばかりは、あの優しい太陽は形を潜めて見えた。


「向日葵さん……?」


 と思ったら、不安そうに太陽が向日葵を見る。その視線はとても優しく温かで、やっぱり太陽は太陽だった。かっこよくて、とても優しい大好きな幼馴染。

 向日葵は鉛のように重たくなった身体に喝を入れて立ち上がる。はじめての殺し合いじっせんによる緊張で、普段の二割も力を出せてない。今回の戦闘だけでできるようにもならないと思う。

 けど、だけど。

 かっこよくて優しくて頼もしい幼馴染の男の子二人ががんばっているのだ。ここでわたしががんばらないでどうする。二人の庇護下にいるばかりなんて、もう御免だと思ったはずだ。

 二人と肩を並べるんだ。

 向日葵はふらつきそうになる足に力を込める。そして頭痛を隅に追いやり、大きく息を吸った。

 そして、


「やろう、太陽くん。わたしたち三人が揃えば向かうとこ敵なしなんだもんね!」


 言うと、太陽はその名の通り暖かく力強い笑みを浮かべた。


「そうだね」


 向日葵は気合を入れて、遠方にいる黄色の屍鬼を睨んだ。

 わたしが絶対にあれを倒す! 必ずこの状況をひっくり返して見せる!

 そして、向日葵は呪文を唱えながら指で印を結び始める。


「<魔術式発動>」


 術式を一つ起動するのは、一次魔術。

 そこにもう一つの魔術を重ねることを二重魔術という。一次魔術は基本で、これは指で印を結んでもいいし、呪文を唱えてもいい。二重魔術以上になると、例えば口で呪文を萎えながら、指でまったく違う印を結ばなくてはならないため、それだけ難易度が上がる。しかし、それだけに一次魔術よりも倍以上に威力は向上されていく。

 当然、複雑に、そして魔術師自身がルールを定めていけば行くほど的確で効果的な魔術が扱える。

 向日葵がこれから構築するのは、二重魔術のさらにその上、三重魔術。

 編む術式は、<追従>よりも遥かに難易度の高い<必中>。そこに<円>を加え、一転攻撃ではなく面攻撃要素を加える。そして最後に<矢>という攻撃魔術式を組み込む。

 魔術式構築を開始した向日葵の右手と左手が別の生き物のように動き、<円>と<矢>の印を結び始める。加えて、口でさらに複雑な<必中>の魔術を編み始める。

 暴発したら命はない。

 けれど、向日葵は何一つ心配していなかった。

 向日葵の<巫女>としての能力は【統御】という。

 その能力は、『森羅万象及びあらゆる事象を思い通りに改変し、統率し、支配する力』。

 向日葵が望めば、この世で敵わないことはない。

 それに。

 太陽があれだけカッコイイ顔で「護る」と言ってくれたのだ。それを信じて、確実に、そして的確に印を結べばいい。

 三人そろったら向かうとこ敵なしの最強。

 軽くなった心で、向日葵は魔術を構築していった。


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