17.女将が行く!
1話目に「ある一座」というのを加えました。
まだ読まれてない方は、そちらも読んで頂ければ幸いです。
「さっきのロサさん、ほんとぉーにかっこよかったです! わたし、かっこいい女性って憧れなんですよ!」
「あら、そう? 褒められるとやっぱり嬉しいね。ヒマワリちゃんは女の子らしくって、あたしはヒマワリちゃんの方が羨ましいけどね」
「いいえ、そんなことないです。わたし不器用だから裁縫もヘタクソですし、料理だってロサさんよりも上手く作れませんし」
「すぐそういう発想が出てくる時点で女の子だよ。あたしなんかヒマワリちゃんくらいの時はただの村娘で、毎日毎晩酒場で酔っぱらい共と怒鳴り合ってる品のない娘だったからさ」
「品がないだなんて、絶対それロサさんしか思ってないですよ! きっとロサさんのファンの女の子、いっぱいいましたよ!」
「まあ、ラブレターはそこらの男共が羨むほどもらったけどね」
「やっぱり!」
あれから時間が経ち。
向日葵とロサは完全に打ち解けあい、先ほどからガールズトークをしていた。
女子会となった場で、男である大地は肩身を狭く水を飲むことしかできない。こういう時、男は激しく無力な存在だと思い知らされる。
と、戸を叩く音が聞こえた。
「失礼いたします。こちらに巫女さまはいらっしゃいますか?」
大地と向日葵は視線を合わせる。それから、ロサと視線を合わせて、軽く頷く。
「ああ、いるよ。入ってきな」
「失礼いたします」
ロサが声をかけると、戸が開き、そこから衛兵が姿を現す。
「巫女さま方、宰相様と団長殿がお二人に至急知らせたいことがあるとのこと。ご同行をお願いいたします」
きびきびした声音で伝えると、衛兵は堂のいった敬礼をする。
そんな衛兵を見て、ロサはやれやれと首を振った。
「あの男共は、乙女のささやかな楽しみすら邪魔するらしい。まあいいさね、行こうか」
よっこらしょっ、と言いながらロサが立ち上がる。
「ほら、さっさと済ませちゃうよ」
「は、はい!」
ロサに言われ、慌てて向日葵と大地は立ち上がった。
しかし、衛兵が急におろおろしだす。
「あ、あの、ロサさん」
「なんだい?」
「呼ばれているのは、こちらのお二人だけで、その……」
「あたしはお呼びじゃないってかい?」
「えーと、あのですね。そのなんて言ったらいいのやら……」
「ハキハキしゃべりな!」
「は、はいぃ! お呼びしているのは<巫女>さまと<矛>さまの両名だけであり、そこにロサさんは含まれていないのです!」
言って、向日葵たちの目から見ても可哀そうなほど挙動不審になる衛兵。ロサの怖さを傍から見て知った向日葵たちには、衛兵を気の毒に思わずにはいられない。
「そうかい」
言って、ロサは衛兵の肩に手をやる。衛兵は恐怖のあまり、肩をビクンと震わせた。
「なら、<巫女>さま方をお連れする任はあたしが引き継ぐよ。あんたは皿の片づけと、シチューが入ってた鍋を洗っときな」
「し、しかし、それはでは私の立場が……」
「安心しな。宰相様と団長にはあたしがちゃんと言って聞かせるから。あんたは、あたしの言われたことをやればいいのさ。ついでに、シチューの残りも食べちまいな」
「しょ、承知いたしました……」
一連の騒動で真っ白になってしまった衛兵が、わずかに言葉を発した。
そんな衛兵には目もくれず、ロサが向日葵たちに向き直る。
「さあ、あのバカどものところに行くよ」
その快活な笑みと迫力に負け、
「はぃ……」
「うっす……」
二人はただ頷くことしかできなかった。
ほんの先日前、「ギター片手に、勇者。」という短編を投稿しました。
そちらも読んで頂けたら嬉しいです。




