嫌われたと分かっていても、いつもあなたを見つめている
あれから1ヶ月が経とうとしていたが、矢萩君から連絡が来ることは一切無かった。
ピロンとラインのメッセージを知らせる音が鳴るたび、私は飛び起き内容を確認する。
――やっほ~恵! 今度、西高の奴らと合コンするんだけど、アンタも来る?
由梨香からだった。私は『No!』を意味するスタンプだけを返し、携帯を放り投げる。
夜のベッドの上で私は力なくその身を預ける。
矢萩君……何しているのかな。
時刻はもう少しで夜中の12時。今日は魔法インド少女ナマステの放映日だ。いつもならラインでお互いに感想を言い合う、とても楽しい時間だった。だが、アニメが始まっても、ちっとも中身が入ってこない。全然面白くない。
「矢萩君……。一人ぼっちで見るアニメってつまらないね……」
テレビ画面を見ながら、私は一人で泣いた。
次の日。
「ねぇねぇ恵。あんた最近付き合い悪いじゃない」
「そうそう、あんたが来ないと合コンは盛り上がらないのよ」
友人の理恵と由梨香が、机の上に突っ伏す私のもとへとやってきた。
私の視線の先は矢萩くんだ。だが、矢萩君はいつも窓からグラウンドを見つめ、私と目を合わせようともしない。
完全に嫌われたな……。
そう思うと、悲しくて仕方がない。私の目から涙が滲み、ぽたりと机の上に落ちた。
「ねぇ、元気ないけどさ。もしかして恵、失恋でもしたの?」
由梨香の言葉に、私は一瞬だけビクッとする。
「なーんてね、あんたみたいな可愛い女を振るような男、そうそう居ないってね」
いますけど、すぐそこに。
「とりあえずさ、あんた、これには絶対参加してよね」
そう言って理恵が、何かの紙を突っ伏す私の目の前に垂らした。
「なになに……年忘れ、2B忘年会……?」
やっと力なく起き上がった私に、二人はニンマリと笑う。
「そそ、終業式の夜にさ、カラオケボックスを貸し切ってクラスの忘年会をやろうと企画しているのよ。いい、こればっかりは強制参加だからね。絶対に来ること、いいね!」
そう言って二人は、私の意志など聞かず、勝手に私の箇所に○印をつけてしまった。
クラスの忘年会……。
私はちらりと矢萩くんの背中を見つめる。
嫌だなぁ。矢萩君も来るのかなぁ。顔合わせるの怖いよお……。
あんなに楽しかったはずのカラオケボックス。それが今や、思い出したくもない恐怖の場所となっている。そう、あの時が楽しすぎて思い出すのが辛いのだ。
憂鬱な気分のまま、私はゆっくりと目を閉じた。