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第5話 不安 side:佐々木小夜

こいつらについて行けば安全か。

私は前を行くソロモン卿を視界の端に止めながらそう思う。


けれど、それで事態が好転するのか?

私は怖かった。

昔――と言っても中学生の時までか、剣道を習っていたけど化け物に立ち向かおうとは考えなかった。

ただ、震えているだけだった。

いや――逃げてはいた。


ぐちゃぐちゃと震える闇色の粘土。

私が化け物を見て抱いた感想がそれだった。

けれど、なぜか背筋が寒くなった。

だから隠れたんだ。

皆の後ろに。


そして、アレは爪をはやして皆を串刺しにした。


私は怖くて声が出せなかった。

いや、本能的に理解していたのか。

奴が次にしたのは悲鳴を上げた奴らを薙ぎ払うことだった。


そいつらは最低でも5つには裂かれて転がった。

あの死体が人間だとは思えなかった。

輪切りになって臓器がこぼれ出したあの死体は。

私にとってアレはただの肉だった。


「無事でございますか?」


そう――アレは話しかけてきた。

【失時執事】ロノウェ・フュンフ・パトリオットと名乗ったアレが。

私はアレを人間だと認めないし、本人に人間だと言ったら侮辱されたと思うだろう。

アレは人間じゃない。

そうであるはずがない。


なにせ、そう聞いた次の瞬間には黒粘土は叩き潰されていたのだから。

使う必要すらないのか、それともそれが武器なのかは知らないが、アレは拳のみで化物を屠って見せた。

――のはずだ。

なんせ、影くらいしか見えなかったのだから確かなことは言えない。

でも、アレは多分素手で――紅い手袋をしていたが、それでやってしまったのだろうと私は思う。


大体アレの主人だってメチャクチャだ。

以前はうちの生徒らしいが、全然別のものに変わってしまっている。


あれが中二病?

日本で卿とか名乗るイタい奴?


とんでもない。

あいつは力を持っているんだ。

レッドとかいう奴と戦った死合。

そいつも大概人間じゃないが――


あいつは炎を刀で斬ったり、挙句の果てには触れてないところまで斬りやがった。

型だって見惚れるほどに綺麗だが――あんな型は見たことがない。

多分、剣道ではない実践重視――もしくはあの特殊能力のために特別な型を用いてるのだろう。

そんなのが中二病とは片腹痛い。

馬鹿馬鹿しすぎる。

私たちが直面している状況はそんなものではない。

むしろそんなことを言い出すほうが幼稚に過ぎるというものだ。


やはり――彼はそうなのだろう。

勘違いでもなんでもなく、彼は卿だ。

そして特別な能力者。

ごっこじゃない本物。




まあ、彼が本物なら私も助かる。

おもに命の安全という意味で。


心配なのは他の人たち。

貴族に対する礼儀作法を知らないことに怒るとは思えない。

そんなの私だって知らない。

けれど、奴の取り巻きが誰かの何げない一言で怒る……

それが、それだけが再々の心配。


とくに伊藤誠人とか言う馬鹿そうな奴!

後輩から聞いたことがある。

その後輩たちは生きてはいないだろうことに思い当り、悲しくなったけど。

今はここに居る人たちの心配。

あの伊藤誠人だけは警戒しなければならない。

噂によれば3股かけたうえで、更にナンパしまくってたとか。

最終的には10人以上と肉体関係を結んだとか。


私にはわかる。

奴は性根が腐っている。

だから問題を起こすだろう。


けど、グリモワール卿が問題を解決するとは――

――失礼かもしれないけど、できるとは思えない。


精々が言付け程度。

とても安心できはしない。

やはり、自分の身は自分で守るほかないだろう。

あんな――この状況でもまじまじと女の胸を眺められる無神経な男からは。

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