食の観点と其れに伴う必要な人材派遣
毎度毎度物々しいタイトルつけてすみません。中身はスカスカです。
先日の異世界講義が終わってから、
「あんたもこの世界で生きる以上は何か自分の役割を見つけなさいよ」
なんて言われた。
前の世界でも将来何しようか迷っていた俺なので、自分の役割っていっても何すれば良いのか。
と、そこで思い出した。
自分で食べ物が貧相だと批判していたじゃないか。
ならそれにしよう。
与えられた自分の部屋から出てカリアのところへ向かう。
◇◆◇◆◇◆◇
「…………私の耳が悪いのかしら?もう一回言ってくれる?」
俺が言うと、カリアは口に運ぼうとしていたカップを止めて頭が痛そうな顔でこう言った。
「だから、この世界に俺が新しい料理を作る」
カタン、とカップを置いて、
「どーしてそういう方向に行くのよ!!!???」
おお、激怒激怒。つーか耳痛ぇ。
「あのねえ、私が言ってんのは召喚獣、じゃなかった、人間としてどうするかってことよ!どんな仕事に就く、誰のために生きる、それが何のためになる、とかそういうこと!食事なんてどうでもいいことじゃない!」
「そう、そこなんだよ」
この世界の人は食事を単なる栄養補給の一つとしか捉えていない……それは違う。
食事の美味しさはまさに明日を生きる糧!額に汗して働く全国のお父さんは妻の手料理を心待ちにして帰宅するってことを、料理を作る側は知らない!
まあ、前世界での俺の好物はハンバーガーにコーラで、誰かに料理作ってもらう体験もなかったんだけど。
「食事ってものはもっと人生を彩る要素になるべきなんだ。だからこの世界で料理を作って、料理ってものを再認識させる。いってみれば、そう、この世界で『食』の改革を起こす!!」
まあ実際はそんな熱い思い持ってるわけじゃないけど。でもオーバーに言うことは目的の実現率を上げる、と前世の経験で知っている。
はあ、とカリアがため息をついて、
「分かったわよ……そこまでいうなら許可してあげるわ。
でも、条件。私に召喚されたという事実を忘れないで、私の言うことを常に第一にする。
自分が召喚された理由を考えて行動しなさい」
「んー…………? あ、そうか」
「……な、なに?」
「いやな、お前の言動が何かのテンプレートのような気がする、何かに似ている……と思ったら、『仲は良いんだけど、素直に言いたいことを伝えられない、主人公に惚れている、幼馴染』だったんだよ」
とは流石に言えない。
「いや、なんでもない。
それより、俺の手伝いに使えるような人を探してくれないか。前世界の記憶があっても、この世界の食べ物を知らないから。お前が飲んでるそれとか」
「まあ、手伝いなら一人くらいあんたにつけても良いわね。セバスに頼んでもらうわ」
セバスとは、名前からもその雰囲気がにじみ出ているように執事のかっこいいおじさんである。あ、おじいさん? 白髪に白髭だが言動がてきぱきしててかっこいい。本名なのかどうかを聞いていないが、実はセバスチャンだという展開希望。
「それと、このお茶? あんたに出したことあったでしょ?」
「あったっけ?」
「あったわよ。ララハビウスの尻尾を切って乾燥、だったっけ?まあ専門的な作り方は知らないけど」
ああ、思い出した。ララハビウスはギルドの依頼のところで見た。カリアに飲まされた記憶は無い。
たしか、ほとんどは養殖で育ててるけど天然のほうが味が良い、さらに形がよくきれいな天然ものはかなりの高級品として買い取ってもらえる。
あ、ララハビウスはトカゲね。親指と人差し指を広げた大きさ。
そのトカゲの尻尾に手を加えて……それをお湯にくぐらせると色と味がつく。
そーいや街の喫茶店みたいなとこで飲んだわ。カリアに飲まされた記憶無いけど。
完璧に紅茶でした。
「で、人材派遣? はどんな人間が欲しいのよ」
「そうだな、当たり前だがまずは料理や料理の材料に詳しいこと。あと本人も料理できないと困る」
「そんなとこ?」
「そう」
「じゃ、そうセバスにも言っとくわ。もう用はない?私忙しいんだけど」
「ああ、もうない。サンキューな」
しかし、机の上にはカップと裏返してある革カバーの厚い本があるだけなのを、俺は見逃さなかった。
まだまだ動かないストーリィ。