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威厳無き主の命令

異世界召還テンプレ。よくわかります。

就職氷河期といわれるこの時代、就職できなかったら同人誌作って生活しようと思っていた大学生(男)。

容姿、結構良い。

頭、結構良い。

運動能力、結構良い。

しかし休日にすることといえばゲーム、漫画、PCゲーム、ア○メイト、たまに仲間とカラオケ(アニソン)。

そんな彼の名前は、淡路島 流 (あわじしまりゅう)。

その日は、大学の友達とカラオケへ向かっているところだった。

そしてカラオケボックスの扉を開けたらそこは真っ暗闇。すぽっと吸い込まれて、気付けば祭壇の上。手術台の上にいるような感じで、まな板の上の鯉状態だった。

そして、駆け寄ってくる金髪青目の美人さん。

ネット小説をよく読む彼は、

『ああ、異世界召還モノか』

とだけ思い、目を閉じた。


◇◆◇◆◇◆◇


「リューウーー」

「……何?」


彼の名前を呼んだのは彼を召喚した人物、カリア。


「あのさあ。わたしがリュウを召喚したの」

「わかってるよ」

「召喚主なの」

「わかってるよ」

「ならなんで対等にしゃべってるのー!」

「さー?」


リュウはいすに座って机に向かって、筆を持って紙に向かっている。

カリアは読んでいた本を閉じて、ふかふかのいすに座ってリュウをにらむ。


「召喚したときもいったでしょ、召喚されたら召喚したものに絶対服従だって。それが絶対のルールって」

「なんか言ってたな」

「だ・か・ら! リュウはわたしに服従なの!ひれ伏すの!わたしはアンタのあるじなの!」

「へーへー」


まともに取り合わず、紙に向かったままのリュウ。

紙には彼が好きなアニメのキャラクターが書かれている。


「なのにリュウはそうやってぞんざいに返事するだけだし……何でそうなのよ!」

「そうって?」

「だからその……あんたの態度よ!」


はあっ、と息をつくカリア。


「もう半ばあきらめてるけど……その意識は問題なの、問題」

「なんで?」

「召喚されたのにその態度っていうそのものが問題なのよ!」

「そんなこといわれてもなあ」


カリアに向き直るリュウ。


「カリアが俺を召喚したことは素直にお疲れ様。でも、俺だってあっちの世界に家族も友達もおいてきた身だぜ?別れも告げられずにこっちに引き抜かれた身としちゃ、主従関係も何も、まず最初に出てくるのは恨み言だと思うんだけど?」

「あ、それはその……ごめんなさい……」


しゅんとうなだれる。


「別に気にしてないけど」

「気にしてないんかい!」


おもしろいな、とリュウは思う。


「ああもう。とにかく、わたしと主従関係だってこと理解しなさい! さし当たって、ちょっと一週間街のギルドで冒険者として生活してきなさい!何も説明も案内もしないから、心細い思いしてきなさいよね!」



◇◆◇◆◇◆◇



というわけで。


「冒険者ギルドねえ……」


そこへ向かうことになったリュウだった。

さすがに何も持たせずに行かせられないという事で、剣とお金(金貨)の入った袋を持ってギルドへ。場所は分からないが誰かに声かければ教えてくれるだろ。


「しっかし、この金貨袋」


めっちゃじゃらじゃらいっている。

巾着を開けて数えてみると、ひい、ふう、みい、30枚。

この世界の金銭感覚は無いが、これは確実に渡しすぎだろう。

彼女の家は神官や巫女を輩出する名家である、というのは彼女自身の口から聞いた。事実だろう、現にものすごいでかい豪邸だし、渡された剣にしても、装飾に凝っている。見るからに高価だ。蔵の中からカリアが適当に持ってきた。

埃は被っているが、錆びたりはしていない。実用可能と判断。

あ、なんか剣を持ったいかついおじさんが通りかかる。のでこの人に聞こう。


「あのー、すいません。ギルドの場所、教えてくれません?」

「ん?別に良いが、冒険者ギルドか?商業ギルドか?方向が全くの逆だが」


あ、ギルドって二つあるのか。


「冒険者のほうです」

「それなら、ほら、あれだ」


そういって今来たほうを指差すおっさん。ギルドから来たのか。

指差すほうには、他の建物より高い、塔のような建築物があった。


「たっけえ」

「お前、今から冒険者になるのか?少し時機を逸していると思うのだが……」


そのとおりだけど、自分からなりたいと思ったわけじゃないから。

しかし、俺の心中に気付くわけがない。読心術でも出来ない限り。


「あれが高いのは、伝書鳩を受け取るためと、遠くの監視だ。まあ、縁のない塔だが……。

それよりお前、死ぬなよ」


それだけ言って行ってしまう。最後の死ぬなよは気をつけて冒険者しろってことだろう。

ちょっとした誤解があるが……まあ、気にしても仕方ない、さっさと行こう。


◇◆◇◆◇◆◇


これまた異世界テンプレ。ギルドに加入するため、証明となるものを作ることになった。

見た感じ、プレートのついたチェーンブレスレット。

ここに名前とランクが書かれる。

ランクはFからSS。それぞれのランク以上の依頼を受けることはできない。依頼を受けるときに契約金が取られる。依頼失敗になるともちろん報酬なしだが、契約金は返ってこない。成功したら報酬金がくる。それには契約金は関係ない。低ランクの依頼には契約金なしのもある。

ところで、名前を告げると、「アワジ、ジマ……」と噛まれた。こっちの世界の人にはちょっと発音しにくいようだ。


「よっし、加入完了」


俺の左手にはギルド加入の証がある。

召喚があるくらいだからこの世界にも魔法があって、このチェーンブレスレットは魔法で溶接して手首から抜けないようになっている。溶接だけど魔法だから熱くなかった。

他にも腐食防止、強度強化などという魔法を掛けられたこのブレスレット。金属ではあるけどけっこうちっさく作られてて、腕を振ってもちゃらちゃらいわない。

作成料とか取られるかなと思ったけど、それを言ったらギルドの人が「それらを提供できるようにギルドは作られています」だってさ。ようするにそんなん気にならないくらいにはギルドは儲かっている、と。

最初だからおれのランクはF。

依頼は受付テーブル(銀行の窓口みたい)にリストがあって、そこから選ぶ。何を受けたら良いとか、ギルドの受付の人がアドバイスしてくれたりする。

で、俺が受けたランクFの依頼はグリーンボアという森のイノシシを10匹倒せというものだった。増えすぎて困ってるから減らしたい、でも危険だからギルド、という流れで近辺の村からの依頼だそうだ。

グリーンボアってどんなのか分からない、といったら緑のイノシシです、と困った顔で言われた。説明になってないぞ、受付嬢よ。

ま、どうにかなるだろ。どんだけ時間かかるか分からないが、最初の依頼は今日一日で終わらせたい。そう思ってさっさと行こうと思ったら、まず鎧なり何なり防具を買えと受付嬢にいわれた。ごもっとも。

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