『転生』
「今日は変な夢を見たんだ、母さん」
「どんな夢なの?」
「えっと……どうしてかは覚えてないけど僕が死ぬ夢」
「やめてよ縁起でもない」
「ごめんね、じゃあ行ってくる」
◇
「よぉ、起きたか?」
「ああ、目が覚めた」
「よく寝てたな。夢でも見たのか?」
「ああ。良い夢だった」
「どんな夢だ?」
「柔らかい寝床があって、綺麗な母さんが居て、暖かい朝食があった」
「そいつぁいい。ここには堅い寝床と汚ぇ写真と糞マズイレーションしかねぇ」
「ま、死んだがな」
「死んだのか? 最後に? どうやって?」
「トラックに轢かれてな」
「そうかい。まぁここでの死に様よりはよっぽどましだろ。ほれ、お前の」
「ありがとよ、じゃあ行ってくら」
◇
「やっと起きた?」
「……ああ」
「随分魘されてたよ? お水、持ってこようか?」
「ああ、頼む」
「うん、わかった」
「………………なぁ!」
「なに?」
「もし、この世界が……俺が起きた瞬間に出来ていたとしたらどうする?」
「突然どうしたの? もしかして、私と……」
「いや、違う。そうじゃない。ふとそう思っただけだ」
「きっと……悪い夢を見ていたのよ」
「ああ、多分そうだな……戦争なんて夢でもごめんだ」
◇
「どうしたんです? もうあの人間では遊ばないのですか?」
「ああ。あいつはもう危ない。気付き始めている」
「別にあの人間一人、貴方の力じゃどうということはないでしょう?」
「馬鹿を言うな。古来より多くの力を持つ者たちがそう考え、人間に敗れてきたのだ」
「そうですか」
「そうだ。忘れてはならぬ。我々が触れられるということは、また向こうもこちらを触れることができるということなのだ」
深夜に受信した神様転生の話を吐き出すためのしょうもない短編。
やっぱり、運命を操る神に反逆するのは好き。
キリコとか。
最後の言葉は多分、ニーチェの言葉に影響を受けている。
怪物と戦う者は、その過程で自分自身も怪物になることのないように気をつけなくてはならない。
深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ。
ただそれだけのしょうもない短編