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吸血鬼の住む城(5)

お願いします。

アイナが部屋から出て行った後もしばらく牢屋の中は騒がしかった。しばらくして、皆諦めたのかまた牢の奥の方へと戻って行ってしまう。


「ね、ねぇ! ちょっと聞きたいことがあるんだけど!!」


俺は向かいの牢にいる女の子を慌てて呼び止めた。するとその女の子はこちらに振り返った。何だかやつれてて生気が感じられない。一体どのくらいの期間ここに閉じ込められているんだろう。


「な、何でしょうか?」


「君たちは一体どうしてここに閉じ込められてるんだ?」


「どうしてって・・・・あいつらが私たちの血を吸うために決まってるでしょ」


あいつらってのは恐らく俺も血を吸われたキャロルとかいう吸血鬼とアイナのことだろう。

ってことはここにいる全員が俺と同じ目にあってるってことか? あいつらはこんだけの人数の血を吸ってるってことか。


「君たちは血を吸われるためだけにここに監禁されてるのか?」


「そうよ、ここに居る皆はあいつらのお気に入りで頻繁に血を吸われているの」


そういえば俺の血が美味い美味いって言ってたっけ。だからここに連れてこられたんだな。・・・・うん、全然嬉しくない。


「ん? お気に入りってことはそうじゃない奴もいるのか?」


「ええ、ここよりも更に下にある牢に閉じ込められてるわ」


更に下? あんだけ下ったのにまだ下があるのかよ。どんだけ深いんだここは。


「でもね、上でも下でも関係ないのよ。どちらにしろここに捕まったら最後。絶対に逃げ出すことはできないのだから」


「・・・・マジかよ」


どうしよう、こんなところで俺の旅は終わっちゃうんだろうか。・・・・いや、まだ諦めるのは早い。何てったってまだここにはシェリルさんがいるのだから。きっと見つけてくれるはずだ。俺はそう信じるのだった。




その頃、シェリルはというと・・・・。


「佐藤さーーん!! どこですかーーー!!」


辺りをキョロキョロと見回しながら城内の廊下を歩き回っていた。ただでさえ広い場内はどこまでも廊下が伸びいくつもの分かれ道が出来ている。


「困りましたね、佐藤さんどこにもいません」


物音が気になってひたすら廊下を進んでいたら、いつの間にか佐藤さんとはぐれてしまいました。いくら読んでも返事は無いし・・・・。


「どうしましょう、これだけ広いと探すのも大変ですし・・・・」


ん? 探す? その時、シェリルはあることを思いついた。そうだった、こんな時に役立つ道具を私は持っていたんでした。


「こんな時こそ、これに頼るしかありませんよね」


シェリルはポケットの中からその道具を取り出した。それは、魔王城から持ってきた一つの便利道具。ケルベロスの道標だった。これがあれば佐藤さんを見つけることができるはずです。


「道標さん、佐藤さんのいる場所まで私を導いてください」


そう言うと、赤く塗られた針の部分がぐるぐると回り少ししてピタッと止まった。


「こっちですね」


シェリルは指し示された方へと歩き始めた。長い廊下を歩いていくたび針の向きはせわしなく動いていく。それに合わせてシェリルは右に左にクネクネと曲がりながら進んでいく。


「これは結構大変そうですね」


シェリルは未だ見えないゴールに向かって只ひたすら歩き続けた。早く佐藤さんと合流しないと。





‘ぐーーー・・・・’


「あ・・・・お腹すいたなぁ」


俺は腹から情けない音を出していた。朝、起きてから何も食べてないのだ。当たり前と言えば当たり前なんだけど。

それにしてもやることないなぁ。俺は床に寝そべってゴロゴロと転がっていた。何か、雰囲気が重くて他の人たちには話しかけづらいし。あれきり誰も何も話さないし、はぁ~・・・・どうしたもんかね。

そう思っている時だった、


‘カツッ、カツッ、カツッ’


ん? この音は・・・・。かすかに聞こえた音に耳を澄ませてみる。どうやら誰かが階段を下りてきているようだ。その音はだんだん近づいていき


‘バンっ!!’


と勢いよく扉が開いたかと思うとその中に誰かが入ってきた。鉄格子越しに扉の方を見ると、そこには先程あったばかりの顔。キャロルがそこにはいた。


「♪~♪~」


軽快なステップを踏みながらこちらの方に近づいてくる。他の牢を通った時に中にいた人たちが怯えるように身を竦めていたのはやはり彼女が恐れられているということなんだろう。彼女はそんなこと気にもしない様子でどんどん中に入ってくる。

そして、俺の入れられている牢の前でピタッと止まった。


「やっほ~、お兄ちゃん!」


「お、おう」


この場所に不似合いな明るい声でそう言われて思わず俺も返事を返してしまった。こんな暗い場所でも彼女のテンションは変わらないようだ。


「もう、どうしたの? 元気ないよ?」


「ま、まぁな・・・・」


俺が元気のない原因はお前に血を吸われまくったからなんだけど。なんて、そんな風に言うと何されるかわからないので黙っておく。


「それで、何か用か?」


するとキャロルはにやっと笑い、舌なめずりをした。なんだ、背筋に嫌なものが走ったぞ。


「用って程じゃないんだけど・・・・私やっぱりもっとお兄ちゃんの血を吸いたくなっちゃって」


「え・・・・」


まさか・・・・。


「だからさっきの部屋にお兄ちゃんを呼ぶために来ちゃった!!」


来ちゃった!! じゃねぇぞ! 俺まだ吸われるのかよ!! キャロルに腕を捕まれ俺は、無理矢理牢の外に連れて行かれた。

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