吸血鬼の住む城(3)
おねがいシマース。
うーん・・・・。何だか頭が痛い。それに体も重い感じがする。俺一体どうなったんだっけ? 確かシェリルさんを探してて、部屋に入ったら急に視界が真っ白になって、それで・・・・・・それで?
「う・・・・・・んー・・・・」
そこまで考えて俺は意識を取り戻した。徐々に視力が戻ってくる。ゆっくりと目を開けるとそこは全く見覚えのない部屋の中だった。
「どこだここ?」
薄暗くて何だか肌寒い。それに妙に鉄臭い匂いが鼻をついた。さっき入った部屋とは真逆の感じの部屋だな。
俺はどうやら椅子に座っているらしく起き上がろうとした。しかし、何故か体が動かない。
「ん? あれ? なんで・・・・」
そこで俺は手首のあたりに違和感を感じた。見てみれば何やら鉄の輪っかのような形をしたものが両手首を固定していた。さらには足首にも同じものがされているらしく動かそうとしても微動だにしない。
「ちょ・・・・なんだこれ」
はずれない!! このっ!! ふんぬっっっっっっっっ!! だぁ~・・・・駄目だ、びくりともしねぇ。
「っていうかなんでこんな状況に?」
「それはね、これからあなたの血を吸うためよ」
「!?」
どこからともなく声がした。あれ? この声、どこかで聞いたような。
突然部屋の明かりがつき内部の様子が明らかになった。この部屋は黒い石造りになっているらしい。そして、俺が座っているこの椅子もどうやら鉄でできているらしい。だから妙に鉄臭かったのか。
「はじめましてお兄ちゃん」
お兄ちゃん!? そう言われた方を見るとそこには一人の少女がいた。黒と赤のフリフリしたドレス(あれっていわゆるゴスロリってやつか?)を着ている。髪は綺麗な金色をしていてそれをポニーテールにしている。
瞳の色は赤色でまるで血のような感じだ。見た目は大体小学校高学年くらいだろうか? 俺の勝手なイメージだけど。
「き、君は」
「私はこの城に住んでる吸血鬼だよ」
「き、吸血鬼?」
まさか、この子があの噂の吸血鬼なのか? 何か俺がイメージしてた吸血鬼と違うんだが。もっとこうマントとか羽織ってて見た目もおっさん的な感じだと思ってた。
「そう、まさか獲物の方からこっちにやってきてくれるとはね」
「え、獲物!?」
「そうだよ、だってこの城にたった二人で来るなんて私に血を吸ってくださいって言ってるようなものだもん」
な、何を勝手な!! っていうか、え? 血を吸われる?
「も、もしかしてだけど俺これから血を吸われるの?」
「当たり前じゃん。この状況を見れば分かるでしょ?」
分かりたくないんですけどーーー!! なるほどね、そのために拘束してるわけね!!
「い、嫌でも俺の血なんてきっと美味しくないし」
「なんで? そんなの飲んでみないと分からないもん」
昔から有名な僕を食べても美味しくないよ作戦は失敗か。まぁ、この方法成功してるのを見たことないんだけど・・・・。
「いや、俺今まで不健康な生活してたからきっと血もドロドロになっちゃってるよ!!」
「大丈夫、大丈夫。それはそれで美味しい時もあるし」
これもダメか! あ、ちなみに俺の血は田舎の大自然で育まれた野菜とうまい水で作られた麦茶のおかげで超サラサラだそうです。健康診断の時にお医者様が言ってた。
「あ、ほら、でもさ!!」
「もう、お兄ちゃんうるさいな」
俺に近づいてきた吸血鬼は膝の上にまたがると首の後ろに腕を回してきた。
「ひっ!?」
こんな状況なのにあ、いい匂いがするとか太ももの柔らかさにドキドキしている自分は死ねばいいと思った。
「とにかく飲んでみればわかるって」
吸血鬼の口が俺の首筋に近づいてくる。ああ、もうだめだ。俺はこのままこの子に血を吸われてしまうんだ。噛まれたら痛いかなぁ・・・・。吸血鬼に噛まれると噛まれた相手も吸血鬼になっちゃうとか聞いたことあったけどどうなのかなぁ・・・・。
色々な考えが頭を駆け巡る。そして・・・・
「いただきまーす」
‘かぷっ’
ついに噛み付かれてしまった。
「痛っ!」
まるで注射針にでも刺されたようなチクっとした痛みが首筋に走る。そしてちゅるちゅると音を立てられながら血を吸われていく。
「んぐっ、んぐっ、ちゅるっ。ゴクッ・・・・」
あぁ~・・・・吸われてるぅーーー・・・・。吸われていくーーー・・・・。
「んっ・・・・じゅる、んごくっ、ちゅ、ちゅるる・・・・」
うあー・・・・。・・・・・・ん? あれ? 何か吸われてることに意識がいってたから気づかなかったけどこの子、微妙に震えてないか?
「ちょ、あの・・・・」
「んんっ!! ごくっ! ジュルルルルル! ぴちゃっ、んごくっ!!」
完全に夢中になっている・・・・。俺の声なんて聞こえていないようだ。
「ちょ、そろそろやめてほしいんですけど・・・・」
何か手足が冷たくなってきた。これって結構やばい状況な気がする。
夢中になっている彼女に何とか止めてもらおうと首を動かす。
「ちゅるっ!! はぁ~・・・・はぁ~・・・・」
すると彼女は名残りおしそうに俺の首筋から口を離した。その時、彼女の口から唾液の糸が伸びているのが見えた。どんだけ夢中になってたんだ。
「あ、あの・・・・・・」
「・・・・・・嘘つき」
「は?」
「お兄ちゃんの嘘つき。自分の血が不味いだなんて嘘じゃない」
そう言うと彼女はうっとりした顔になり頬を赤く染めた。
「私、こんなに美味しい血初めて飲んだわ・・・・。んくっ、ふぁぁ~・・・・」
両手を頬に添えそんなことを言う彼女。
「ま、マジですか・・・・」
どうやら俺の血は美味しいらしいです。・・・・喜ぶべきなのかなこれ。
皆さんお元気でしょうか? 作者は絶賛風邪ひき中です。
そんなことはさておき、お陰様でこの小説のPVが前話で30000を超えることができました。こんなにたくさんの方に読んでもらえて感無量でございます。これからも引き続きこの小説を楽しんでいただければ幸いです。よろしくお願いします。




