吸血鬼の住む城(2)
と、閉じ込められた!? 冗談じゃないぞ!! ってか何で閉じ込められなきゃならんのだ!! ハッ! そうか、これはきっとドッキリだな。街の人たちが俺達をからかっているに違いない。きっとそうだ!! さぁ、カメラはどこだ!! っていうか暗くて何も見えねぇぇぇぇぇぇぇええ!! くそぅ出せよカメラはどこだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
「佐藤さんどこですか!? 大丈夫ですか!!」
俺が一人で挙動不審になっているとシェリルさんが心配そうな声で呼びかけてきた。
「シェリルさん! え、どこですか?」
何かが動いてる気配はするもののシェリルさんがどこにいるかまでは分からない。手を伸ばしながら声が聞こえてきたあたりまでゆっくりと進んでいく。
「佐藤さん、ここです。私はここにいます」
「ここって言われても・・・・暗くてよくわからな・・・・」
その時、伸ばした俺の手のひらに何かが触れた。
「うおっ!?」
「キャッ!!」
反射的に手を引っ込めてしまったが今の声はシェリルさんだ。どうやらシェリルさんの体のどこかに触れたらしい。
「シェリルさん! 大丈夫ですか?」
「は、はい」
シェリルさんの声が近くに聞こえる。この辺にいるな。俺はもう一度手を伸ばし先程何かが触れたあたりを探った。確かこの辺で・・・・
‘むにょん’
またしても俺の手のひらに何かが触れた。にしても、なんだこれ? 何かすごく柔らかいんだが。
「ひうっ!!」
すると、また近くでシェリルさんの声が聞こえた。
「シェリルさん、よかった。何とか合流できましたね」
「そ、そうですね・・・・。あ、あの佐藤さんその、で、出来れば手の位置を変えて欲しいんですけど」
「へ? 何でですか?」
そういえば俺が触ってるこの柔らかいの一体何なんだろう? ふにょふにょしてて手触りがいいけど。
‘ふにふに’
「うきゅぅん!! さ、佐藤さん! そ、そんなに揉まないで・・・・ください・・・・」
揉む? え、俺本当にどこに触ってるのこれ?
そう思った時だった、急に城内に明かりがつき先程までの暗闇が一気に祓われた。
「うわっ!! 急に明かりが・・・・」
そして、俺がまず見たものは・・・・目の前で涙目になって顔を真っ赤にしたシェリルさんと、そのシェリルさんのちょうど胸の辺りを鷲掴みにしている自分の手だった。
「さ、佐藤さぁ~ん・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・」
あ~なるほど。揉むなってそういうことね。いや~だって自分女の子の胸なんて触るの初めてですもん。なんのこと言ってるのか分からなくても仕方ないよね。え? 感触で気づけよって? だって自分テンパってましたもん。それに触り心地がよくてもうちょっと触っ(ry
「す、すいませんでしたぁぁぁぁぁぁああああ!!」
床にヒビが入るんじゃなかろうかというほど勢いをつけて俺は土下座をした。何してんだ俺は!!
「さ、佐藤さん。だ、大丈夫ですから。それ以上したら佐藤さんの頭が割れちゃいますよ」
あんなことされても俺のことを気遣ってくれるシェリルさん。あぁ、なんて寛大な心をお持ちなんだ。
「いや、本当にすいませんでした!」
あの後俺は何度もシェリルさんに頭を下げた。
「いえ、もう大丈夫ですから。そんなに気にしないでください」
まだ少し赤い顔でシェリルさんは笑ってくれた。やばい、何か少し泣きそうになった。
「それより、この明かりは一体誰が」
あ、そういえば。先程のことで忘れかけていたが急に明かりがついたんだった。見渡してみれば壁にはロウソクの灯った照明がずらりと並び、天井には豪華なシャンデリアが吊るされていた。真っ暗だったときは分からなかったがこの城、本当に中も広い。目の前には大きな階段があり、二階部分にはいくつもの通路があるのが見える。今いるこの一階部分にもたくさんの扉と通路があり構造がどうなっているのかさっぱりわからない。
「明かりがつくってことは誰か住んでるってことですよね・・・・」
「た、多分」
「ど、どうします佐藤さん。少し探索してみますか?」
「うーん・・・・」
どちらにせよ入口は開かないしこのままここにいても何も解決しないしな。かと言って下手に動いたら迷っちゃいそうだし。はて、どうしたものか。
そう俺が考えている時だった、
「? 佐藤さん、今何か聞こえませんでしたか?」
「へ? 何かって?」
そう言われて耳を澄ますが俺には何も聞こえなかった。
「何も聞こえませんよ?」
「いや、今確かに何か聞こえたんです。何か足音みたいなのが・・・・こっちです!」
「あ、ちょっとシェリルさん!!」
シェリルさんは二階めがけて走り出しそのまま右側の通路へと入って行ってしまった。
っていうか足はやっ!! 何でそんなに階段を早く上ることができんだよ!!
「シェリルさん!! ちょっと待って!!」
急いで追いかけるが、如何せんこの城は広いため通路の先にはおびただしい数の部屋がその距離も遥か先までずーっと伸びていた。
「あぁ、もうどこに行ったんだよ! シェリルさーーん!!」
通路は更にL字に折れておりその先にはまたしてもおびただしい数の部屋。更によく見るとその先は左右に通路が分かれていた。
本当に迷宮か何かかここは。下手に動けばマジで迷うぞ。
「シェリルさーん!! シェリルさーん!!」
名前を呼びながら通路を進んでいく。しかしどこからも返事は帰ってこない。本当にどこに行ったんだ?
そう思った時だった
‘ガチャっ’
左右に分かれた通路に差し掛かったときどこかから扉の開くような音が聞こえてきた。キョロキョロと辺りを見ると左側の通路のちょうど突き当たりの部屋が開いているのが見えた。
「シェリルさん? そこにいるんですか?」
その扉の前までゆっくりと進み恐る恐る開いた部屋の中に入る。どうやらここは客室か何かのようで大きな白いベッドと、小さな丸いテーブルに椅子。それから大きな鏡台が置かれていた。
何か結構シンプルな部屋だな。部屋は広いくせにそれだけしか家具が置かれていないので何だか質素なようにも感じる。
「それよりも、シェリルさんは」
部屋の中を見る限り人の気配はどこにもない。シェリルさんはここに入ったんじゃなかったのか?
念のため部屋の中を探してみるベッドの下には・・・・いない。鏡台の裏側に・・・・いるわけないか。やっぱり、誰もいない。
「じゃあ、なんでこの部屋の扉は開いてたんだ?」
そう考えていたとき、鏡台に何かが映った様な気がした。
「ん?」
後ろを振り向くが何もいない。気のせいか? とりあえず誰もいないならこの部屋に用はない。さっさと出ようと思ったのだが・・・・
「あれ? 扉が閉まってる?」
入ったときは開けっ放しにしていたはずの扉がいつの間にか閉まっていた。なんだろう、このデジャヴ感。案の定、扉を開けようとしても全く開かなかった。
「おい、またか!! またなのか!! 何なんだよ一体!!」
扉を開けようと何度押したり引いたりを繰り返すがビクともしない。畜生!! こんなことならもっとちゃんと体を鍛えておくんだった!!
そんな悪あがきを繰り返していたとき
「くすくすくすくすくす・・・・」
「!?」
どこかから不気味な笑い声が聞こえてきた。何だ!? めっちゃ笑われてるぞ!!
「だ、誰だ!!」
耐え兼ねた俺はそう叫ぶが一向に笑い声は止む気配がない。
「くそっ!! 一体なんなんだよ!!」
俺はもう一度扉を開けようと思い、タックルをかましてみるが全く効果なし。うーん・・・・悲しきかな我が筋力。
その時、俺の背後で何かが動く気配がした。さっき調べたときは誰もいなかったはずなのにどうして?
嫌な汗を体中にかきながら俺はゆっくりと後ろを振り返った。
そこにいたのは・・・・・・
「ごめんね。お兄ちゃん」
「へ?」
何が起きたか理解する前に俺の視界は真っ白になり、そこで俺の意識は途絶えていった。
「ごめんね・・・・」
意識が完全に無くなる前にそう一言だけ聞こえた気がした。
次回吸血姫が登場する予定です。あとこの廃城のイメージは初代バイオハザードの洋館を更にでかくしたような感じです。