どうしてこうもいろんなことが起きるのだろうか
今回から新しい章になります。
とある古びた城の中。そこに一人の少女がいた。少女は何かに怯えひたすら出口を目指して走っていた。
あたりは薄暗く、自分が今どこを走っているのかも分からない。
「はっ・・・・はっ・・・・出口、出口はどこなの!!」
そんな少女の後ろから何かが追いかけてくる気配がした。その気配に気づいた少女は涙目になりながら、がむしゃらに走り出した。
しかし、それがいけなかったのか少女は何かにつまずき勢いよく倒れ込んでしまった。すぐに立ち上がろうとするが体が思うように動いてくれない。
そんなことお構いなしに何かの気配はどんどん近づいてくる。
「あ・・・・い、いや・・・・」
そして少女の目の前まで迫ってきた気配はゆっくりと腕を伸ばし少女の体をガシッと掴んだ。
「逃げちゃダメでしょ・・・・あなたにはまだやってもらうことがあるのだから」
「いやぁぁぁぁぁああああああ!!」
少女の悲鳴が城内に響き渡った。
あの森を抜けてひたすら歩き続けること多分数時間位。特にこれといったトラブルもなく俺達は目的地の街の目の前までついた。
「や、やっとついた・・・・」
街の影が結構遠くに見えてたからある程度覚悟はしていたけどやっぱり疲れた。もうさっさと街に入ってどこかで休憩したい。
「佐藤さん大丈夫ですか?」
シェリルさんが心配そうな顔で見てきた。シェリルさんはなんでそんなにピンピンしているんだろうか。いくら魔王とはいえ女性の前でへばってるところを見せるのはちょっと情けなくなってくる。
「だ、大丈夫ですよ。シェリルさんの方こそ大丈夫ですか?」
「私はまだまだ大丈夫ですよ! 早く街の中を見て回りたいです!!」
マジかよ・・・・さすが魔王。シェリルさんは好奇心旺盛だからそれもあるのかもしれないな。
「じゃあ、さっさと行きましょうか」
「はい!!」
街の入口に来るとそこに立っていた看板にはこう書かれていた。
‘ようこそオーリエへ!!’
「ここはどうやらオーリエという街らしいですね」
「へぇー、結構いいところそうですね」
街の中に入るとまず目についたのが人の多さであった。様々な店が軒を連ねて並んでおり、クレングスの街よりも活気に満ち溢れている。
そして更に目を引いたのが、
「シェリルさん。何か明らかに人間じゃなさそうな種族が混ざってるんですが・・・・」
「そうですね。恐らくここは他種族の人たちが一緒に住んでいるんだと思いますよ」
な、なるほど。さすがは異世界。現実じゃ絶対にありえない光景だなこりゃ。うわ、なんだあの人。上半身は人間みたいだけど下半身はまるでタコみたいな足がたくさん生えている。
あっちにも、あれはもしかして虎か? ああいうのはいわゆる獣人ってやつなのかな。二足歩行してるけど顔が明らかに人間じゃないし、何より後ろからは尻尾が見えてるし。
「す、すげぇ・・・・」
「佐藤さんとりあえず街中を回ってみましょう。どこかに宿屋があるかもしれないですし」
「は、はい!!」
とりあえず俺達は街の中を歩いてみることにした。
その時、
‘ベチャ’
「うひぃ!!」
何か水っぽいものが背中にあたった感触がして、思わず変な声を出してしまった。
「な、なんだ?」
後ろを振り返るとそこには全身が青色をした女の人が立っていた。しかし、その見た目は明らかにおかしいものでまるでゼリーのようなプルプルした体をしていた。
「あ、ご、ごめんなさい」
そう言ってぺこりと頭を下げるとそのまま人ごみの中に入って行ってしまった。歩くたびに体がプルプルと揺れているあれはなんだろうか。
「佐藤さん大丈夫ですか?」
「あ、ええ。シェリルさん今の人は一体・・・・」
「え? ああ、あの方はきっとスライム族の方ですね」
「ス、スライム?」
はぁー・・・・どうやら本当にこの世界には色々な種族がいるらしい。
俺はそっと背中に触れてみた。しかし、どこにも濡れているような感触はない。
ある意味貴重な体験したかもな。
そんなこんなで街中を歩き回ってみたのだが、これがなかなか広くてぐるっと回っただけでも一苦労であった。そうしているうちに日が暮れて街中にオレンジ色の明かりが灯り始めた。なかなか暖かみのある色で歩いていると幻想的な雰囲気に包まれる。
「すごいですね!! 佐藤さん!!」
シェリルさんはそれを見てテンションが上がったらしく先程からぴょんぴょん跳ねている。
逆に俺はまだ宿なりなんなり見つからないのかとげんなりしていた。
「は、腹減った・・・・」
ついには腹も鳴きだす始末。俺の頭の中は早くどこかで休憩し何か食べたいという考えでいっぱいになっていた。
それから少しして・・・・
「や、やっと見つけた・・・・」
俺達は宿屋を見つけそこに泊まることにした。小さなアパートのような形をしていてすでにいくつかの部屋には明かりがついていた。
「はいそれじゃあごゆっくり」
「ありがとうございます」
シェリルさんが受付を済まし俺達は部屋に向かった。
「今回はきちんと二つ部屋が取れてよかったですね」
「そ、そうですね。私は別に一緒でもよかったですけど」
シェリルさんが最後に小声で何か言ったが今の俺には全く聞こえていなかった。
「それじゃあちょっと休憩したら一緒に飯食いに行きましょう」
「はい分かりました」
そう約束しお互いの部屋へと別れた。部屋の中にはふかふかのベッドがありそれを見た俺は思い切りベッドに向かって倒れ込んだ。
「ああ、寝床があるって幸せ・・・・」
つくづく俺はそう思うのだった。