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この森抜けてどこに行こう

今回で妖精の森編はおしまいです。一応・・・・

元に戻ったシェリルさんは回復魔法を使って大妖精の介抱を始めた。まぁ、そんなに強力な魔法は使えないらしいので時間はかかるそうだが確実に今より状況は良くなるだろう。


「あなたたちは一体?」


大妖精は弱々しい口調で俺達に話しかけてきた。

さて、どう説明するか。


「えーと・・・・俺達はたまたまこの森を通りがかった旅人です。色々あってどこから説明したらいいのかわからないんですが・・・・と、とりあえず今は体調が回復するまでそのままおとなしくしていてください」


「す、すいません。ちょっとした回復魔法しか使えなくて・・・・ちょっとずつ元気にはなっていくとは思うのですが」


シェリルさんは申し訳なさそうな顔をしていた。


「そんなことないです!! シェリルさんには何から何までお世話になって・・・・本当に、本当にありがとうございますです~!!」


そんなシェリルさんをフォローするためにシグナムは何度もペコペコと頭を下げた。


「あ、もちろん佐藤さんもです~!!」


今‘あ’って言わなかったか? まぁ、確かに俺何にも活躍してなかったけどさ・・・・。





少しして、大妖精は何とか空中に飛び上がることができるほどまでに回復し、シグナムに支えてもらいながらもこちらの目線と同じくらいの高さまで飛び上がった。


「大丈夫ですか、大妖精様?」


「ええ、大丈夫よ。それよりもあなた達には色々とお世話になってしまったみたいね。まずは、ご迷惑をおかけしたことを謝るわ。本当に、申し訳ない」


これまでの経緯をシグナムから聞いた大妖精は深く頭を下げた。それにつられて隣のシグナムも頭を下げた。


「い、いえそんないいんですよ。ね、佐藤さん?」


「え? あぁ、はいまぁ。そうですね・・・・」


こういうところでキチッとした返しができないあたりが俺のなってないところかもなぁー・・・・としみじみ思った。


「私としたことが怪しいとわかっている者にあんな簡単に操られてしまうなんて。本当に情けない話です」


「怪しい者?」


「ええ、この森を数人の集団が通り抜けて行ったんですがその容姿が不気味な黒いフードを被っていていかにも怪しい雰囲気を醸し出していたので警戒するように指示をしていたんです」


旅の一団か。やっぱりこの森を通ってたんだな。


「しかし、その集団がこの聖樹木までやってきたとき既に他の妖精たちと連絡が取れなくなっていて、不思議に思った私はその方たちに何か知っているか聞いてみようと思ったのですが・・・・そこから先はこの通りです」


「そうだったんですか・・・・」


どうやら大妖精よりも先に他の妖精たちが犠牲になっていたようだ。


「それじゃあ、その時の集団の顔とかってどんなだったか覚えてませんか?」


特徴なんかがわかればもっと探しやすくなるかもしれないしな。


「顔ですか。それが、その時のことを思い出そうとすると何故か頭に痛みが走ってモヤがかかったように思い出せないんです」


「そう、ですか・・・・」


ダメかー。どうやら奴らそのへんの記憶に関するプロテクトはきちっとしているようだ。大妖精がダメってことは他の妖精達もダメだろうな。


「すいません、お力になれなくて・・・・」


「いやいや、そんな大丈夫ですよ。思い出せないのならしょうがないですし」


まだ調子が良くない奴に無理をさせるのも酷だしな。


「そういや、さっきまでいた他の妖精たちは?」


シェリルさんがぶっ飛ばしていった妖精たちは先程まで周りを飛んでいたのだがいつの間にかいなくなっていた。


「みんな自分の管理するエリアに戻っていきましたよ~。ここ数日の記憶がなくなっちゃってるみたいで森が心配だからって」


「そうなのか」


あんなボロボロになってたやつもいたのに皆熱心だな。感心、感心。


「大妖精様は今日はゆっくりお休みになられたほうがいいです~」


「そうね。悪いけど今日はあなたたちに森の管理を任せるわ」


「了解です~!!」


「その前に・・・・」


不意に大妖精はこちらの方まで近づいてきた。


「あなた方にこれをお渡しします」


そう言って俺が差し出した手のひらに大妖精は何かを置いた。


「これは?」


そこにあったのは茶色の編みこまれた紐に、ひとつ尖った形をした小さな緑色の石のようなものがついたリングだった。


「それはこの聖樹木に数年に一度なる木の実を結びつけたものです。それを持っていればあなたたちに風の加護が訪れる。自由に風を吹かせたり、一時的に風向きを変えたりすることもできるわ」


「そんなすごいものもらってしまってもいいのですか?」


「ええ。あなたたちにこの森を助けてもらったお礼よ。この加護があなたたちの助けとなるように祈ってるわ」


「あ、ありがとうございます」


「大妖精様も早くお元気になってくださいね」


「ええ、あなたたちも元気でね」


そして、大妖精は聖樹木の中にある住処へと帰って行った。


「さて、それでは私達も行きますか。佐藤さん!」


「そうですね、さっさとこの森を抜けましょう」


このままだと次の街に着く前に日が暮れてしまうかもしれない。

森の中で野宿とかそれだけは勘弁してもらいたい。


「佐藤さーん! シェリルさーん!!」


歩き出したとき後ろの方からシグナムの声がした。


「あれ? 大妖精様を見てなくていいのかよ?」


「いえ、大妖精様にお二人を森の出口まで案内してきなさいと言われたので~!」


「そうなんですか。でしたら是非お願いします」


「はいです~!!」


と、いう訳でシグナムの案内を元に出口まで付いていくことになった。




しばらくして


「ここが出口です~」


「おぉ、ついたか!!」


「結構近かったですね」


そこまで時間もかからずに出口の前までたどり着いた。目の前には道が開けておりさらに遠くにはうっすらとだが街の影が見えた。


「さて、それじゃあここでお別れだな」


「はいです~・・・・お二人共本当にありがとうございました~!! このご恩は一生忘れないです~!!」


「ご恩だなんて大げさですよ。シグナムさんも頑張りましたしね」


「そうだな。それじゃあこの森のことは任せたからな。またしっかりと守ってくれよ」


「はいです~!! 一生懸命頑張ります~!!」


シグナムは力強く宙を舞った。


「それでは、行きますか佐藤さん」


「はい」


俺達は開けた道の上を歩き森の出口を抜けた。


「お元気で~!!!」


後ろから聞こえるシグナムの声に、森の出口が見えなくなるまで俺達は手を振り続けた。


「さて、次はどんなところにつくんでしょうかね・・・・」



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