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こんな魔王と勇者ってどうですか?  作者: ケセランパセラン
初めの町 クレングス編
19/41

子供の消える町クレングス(9)

今回でこのパートは終了になる予定です。

「シェリルさん!」


俺は大慌てでシェリルさんたちがいる部屋に戻ってきた。


「どうしたんだよそんなに慌てて?」


「町の子供たちを見つけたんですけど鉄格子で囲まれてる部屋にいて開けられないんです」


「それで?」


「シェリルさん開けてください」


「はぁ? 何であたしがそんなことやらなきゃなんねぇんだよ!」


おーーーい! 俺たちの目的それだし! 子供たちの救出だし!


「お願いしますよ! シェリルさんにしか出来ないことなんですから」


「ちっ、はぁーわかったわかったよ」



このバージョンのシェリルさんお願いすれば案外何でもしてくれるな・・・・





子供たちがいる部屋まで戻ってきた俺たちは早速鉄格子の扉を開けることにした。


「じゃあ、シェリルさんどうぞ」


「ん? どうしろってんだよ」


「いや、その馬鹿力でこうメキメキっと・・・・」


「お前なぁ・・・・誰が馬鹿力だ!」


ひでぶっ! 頭を思いっきり叩かれた。

やっぱり馬鹿力じゃないか。軽く意識が飛びかけたぞ。


「す、すいません。でもシェリルさんじゃないと出来ないし・・・・」


ウルウルした瞳で見上げる。

ウルウルウルウルウルウルウルウルウルウルウルウルウルウルウル・・・・


「だーっ! もうわかったよ! わかったからそのウザイ顔をするのやめろ!」


ふっ・・・・俺のウルウルビームが聞いたようだな。



それからシェリルさんはありえないような馬鹿力で鉄格子をへし折っていき部屋に大きな穴を空けた。


「す、すげぇな・・・・本当に」


「はぁ疲れた・・・・」



俺は中に入ると子供たちのいるところまで近づき無事を確認した。


「みんな大丈夫か?」


「うん。お兄ちゃんたちどうしてここにいるの?」


「皆を助けにきたんだよ。さぁお家に帰ろう」


「ギーグはおいて行っちゃっていいの?」


「へ?」


予想外の質問に変な声をだしてしまった。


「おいて行くってどういうこと?」


「だってねギーグ1人で寂しいって言ってたから。だから皆で少しの間お泊りしていってあげようって言ってたの」


「お、お泊りって・・・・じゃあ皆はギーグにさらわれて来たんじゃないの?」


「ううん。初めて会った時はギーグが美味しいお菓子をたくさんくれてそれでお家に遊びに来ない? って言われたの。だから僕たちそのままギーグについていったんだ」


う、うーん・・・・これはでも結局のところさらわれ・・・・いやでも子供たちも同意してるし・・・・うーーん・・・・


「じゃあひどいこととかされてないんだね」


「うん! 昨日も一緒に怪獣ごっこして遊んでたよ」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

ギーグ・・・・お前いい奴だったんだな。俺誤解してたよ。あれなんだか胸の辺りがチクチクする。

ぶん殴ったり、背中の結晶引っこ抜いてたりしてた俺達って一体・・・・


「で、でもねお父さんやお母さんに何も言わずどこかに行っちゃうのは駄目だよ。皆心配するんだからね」


「う、うん。ごめんなさい」


「わかればよし。とにかく皆お家に帰ろう。ギーグにはまたいつでも会えるからね」


「「はーい」」


なんだろう。幼稚園の先生になった気分だった。






「あ、お兄ちゃん。みんなも!」


アーデルが安心した顔でこちらに駆け寄ってきた。


「皆無事だよ。よかったなアーデル」


「うん。ありがとうお兄ちゃん」


「よし。とりあえず皆はお家に帰ってお母さんとお父さんにごめんなさいしてきなさい。いいね」


「「はーい」」


というわけで子供たちは先に家に帰すことにした。


「アーデル一応お前もついっていってやれ。道に迷ったりしたら大変だから」


「で、でもギーグが・・・・」


「大丈夫。俺達にまかせとけ」


「わ、わかった」



アーデルを先頭にしてぞろぞろと子供たちは出口の方えと向かっていった。





こうして子供たちの救出は無事にすんだのだけれど


「さて、どうするかな」


相変らずのびたままのギーグの背中にはまだあの結晶が残っていた。


「シェリルさんこれどうすればいいんですかね」


「引っこ抜けばいいんじゃ・・・・」


「駄目、ぜったい! それ以外の方法で!」


「はぁ~面倒くせえなぁ」


そう言って頭をポリポリとかくシェリルさん。


「シェリルさん本当にどうしたんですか? いつもはもっとのんびりした感じだったのに」


「それはあたしの表の人格だろ。今のあたしは裏の人格なんだよ」


・・・・・・・・・・はい?


「え、ちょ、ちょっと待って。裏の人格ってなんですか?」


「あたしの人格はな表の人格が何らかの危険に及ぼされた時にでてくるものなんだよ。さっきあのガキを庇おうとしたときに表の人格が命の危険にさらされたわけ。だからあたしがでてきて表の人格とこの体を守ったんだよ」


「え、ってことは俺の知ってるシェリルさんの人格は今どっかにいっててそのかわりにもう1つの人格が今シェリルさんの体を動かしていると」


「ちなみにおまえが宿屋で風呂覗こうとした時に電撃をくらったのもこいつの体に何かしらの危険がせまっていると判断されたからだからな」


「そ、そのことについては申し訳ございませんでした」


シェリルさんまさかの多重人格かよ。俺としては早く表の人格に戻って欲しいんだが・・・・


「そ、それよりも今はギーグのことをどうするかですよ!」


「ああ、そうだなぁ~・・・・あっ」


「何か思いつきましたか!」


「そうかこの結晶魔力で出来ているからこいつから魔力を抜き出しちまえばいいんじゃねぇか」


そう言うとシェリルさんはギーグ背中に触れた。

その瞬間ギーグの体がうっすらと光り始めた。


「だ、大丈夫なんですよね。それ」


「魔力を吸収してるだけだ。安心しろ」


しばらくするとギーグの背中に生えていた結晶が縮まりだした。

そのままどんどん小さくなっていきやがて完全に消滅してしまった。


「おおーーー」


「まぁこんなもんだな」


そんなことができるならなぜ初めからやらなかったのかというツッコミをいれたかったがまたどつかれそうなので黙っていることにした。




しばらくして、ギーグが目を覚ました。


「アレ、オレハイッタイナニヲ・・・・」


「お、起きたか」


「オ、オマエハ・・・・」


「大丈夫か? どこか痛いところは?」


「ア、アア。スコシセナカガイタイガダイジョウブダ」


「そ、そうか」


やっぱり引っこ抜くのは駄目だったのね。


それから俺は今まで起こったことを全部説明した。


「ソウカ。オレハソンナコトヲ・・・・」


「覚えてないのか?」


「アア。ソノアヤシイレンチュウニアッタトコロマデハオボエテイルンダガソコカラサキハナニモ」


「そうか・・・・」


旅の一団に何かされてからの記憶が一切ないとするとやっぱり何らかのかたちで操られていたってことなのかな?


「ソレニシテモマサカマオウサママデイラッシャルトハ」


そう言ってシェリルさんの方を見る。


「まったくあたしに手をだすなんてとんでもねぇ野郎だぜ」


「モウシワケアリマセン・・・・」


「本当は消し炭にしてやりたいところだがまぁ今回は許してやろう」


「ア、アリガトウゴザイマス」


さらっと恐ろしいことを言うシェリルさんであった。


「ハハハ、マッタクマオウサマニハシツレイナコトヲスルシ、コドモタチノリョウシンニハシンパイヲカケサセルシサンザンダナオレハ」


「でも子供たちは楽しかったって言ってたぞ」


そういうとハッと顔を上げるギーグ。


「ホ、ホントウカ?」


「ああ、また遊びに来るってさ」


「コワガッテイナカッタノカ?」


「ああ、全然。まぁ中にはそういう子もいるかもしれないけど子供なんてのは一度友達になっちまえばそんなことすぐに忘れちまうさ」


「ソ、ソウカ。・・・・ソウダナ」


そう言って嬉しそうに微笑むギーグを見て俺はやっとこの事件が終わったんだと思った。






それから町に戻ってきた俺たちはあちこちで子供達に抱きつく大人たちを目撃した。

突然帰ってきた子供達に町中が驚きそして喜びの声をあげていた。


「一件落着かな」


「みたいだな」


「・・・・で、シェリルさんはいつになったら元に戻るんですか?」


「あん? あたしじゃ不満なのかよ」


「いや、そういうわけではないですけど・・・・」


「安心しろ。そろそろ交代の時間だ」


「そ、そうなんですか」


やっと俺の知ってるシェリルさんに戻るのか。ホッとした俺は思わず「よかった」と呟いてしまった。


「聞こえてるぞ」


「ぬお! ごめんさい!」


「ったく・・・・まぁいいや。じゃあ表のあたしのことよろしく頼むぞ」


そう言った直後力が抜けたようにシェリルさんが寄りかかってきた。


「おっと! シェリルさん! 大丈夫ですか?」


「うにゅ~・・・・あれ私は一体? あ、佐藤さんどうしたんですかそんな心配そうな顔をして」


「シェリルさん俺が分かりますか?」


「え、佐藤さんですよね?」


戻ったああああああああああああああああああああああああああああ!!


「よかった! 本当によかったあああああああああああああああ!!」


「佐藤さん!?」


驚くシェリルさんをよそに1人ではしゃぐ佐藤であった。



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