さぁ出発だ!・・・でもどこに?
グダってまーす。
「それでは、早速ですが行きましょうか佐藤さん」
「え!?もうすか!っていうか一体どこに?」
「えーと、そうですね・・・・道標によると彼らはまずここから西に向かっています。それで途中にあるクレングスという町に立ち寄っているようですね」
町か。っていうか道標すげえな、どこに立ち寄ったとかまで分かるんだ。
「じゃあ、まずはそこに向かうわけですか」
そこで俺は一つ気になることがあった。
「ところで、魔王様。移動手段って何かあるんですか?」
「え?移動手段ですか?」
「いや、え?って・・・何かあるんですよね?乗り物とかもしくはそこまでワープすることができる便利アイテムとか」
「えーーーと・・・すいません佐藤さん。そういうのは無いんですよね」
・・・・・・・・・・・え?
「今、なんて?」
「え、えと・・・・そういう乗り物とかワープとかできるようなアイテムは無いんです」
・・・・・・・・・・・・・・・・ふっ。
うそだろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!
「じゃ、じゃあそこまで何で行くんですか!?」
「え?あ、歩いてですけど・・・・」
徒歩ですかあああああああああああ・・・・
え?ってことはこれからずっと徒歩で奴らの後を追いかけるってことか。
「はぁ~・・・・」
だめだ。先が思いやられすぎる。
「あ、あの佐藤さん。大丈夫ですか?」
大丈夫かと聞かれたら大丈夫じゃないです・・・・はい。
「ちなみにそこまではどれくらいあるんですか?」
「そうですね。ここから4時間くらいでしょうか。そんなに遠くはないですよ」
「そ、そうですか・・・」
4時間ねえ~・・・結構あるんですけど。
「そこに行く前に何か持ってくものとかはいいんですか?ほら何があるか分からないし」
「そうですねぇー・・・とりあえずこの道標と薬草とかが少しあれば大丈夫だとは思いますけど」
うーん・・・・本当に大丈夫かなぁ~?
「それよりも佐藤さん。早く彼らの後を追いかけなければどんどん距離が離れていってしまいますよ」
「うー・・・わ、わかりました」
色々不安はあるもののとりあえず俺らは西にあるクレングスと言う町に向かって出発することにした。
「と、その前に魔王様。一つ聞いておきたいことがあるんですが」
「はい。なんでしょう?」
「あなたの名前を教えてくれませんか?せっかく友達になったんだしそれに外で魔王様っていうのも色々まずいでしょう?」
「あ、ご、ごめんなさい!そういえば私まだ自己紹介してませんでしたよね」
そして魔王は俺と向かい合うとにっこり笑って
「私の名前はシェリル・フェステッドといいます。一応魔王をやらせてもらっています。こ、これからよろしくお願いしますね佐藤さん」
その笑顔は魔王と呼ぶにはあまりにも優しすぎるものだった。
「こ、こちらこそ。えーとシェリルさん」
そんなこんなでとりあえずこっ恥ずかしい自己紹介を終え俺達は城から外に出た。
外に出ると俺は自分が何をしにこの城に来たのかを真っ先に思い出すことになった。
「あ、佐藤さん!早かったですね。もう魔王を倒してきたんですか?」
そこには俺に魔王を討伐してくれと依頼してきたカトレアさんがいた。
・・・・・・・そうだったああああああああああああああああああああああああ!!!
すっかり忘れていた。そういや俺救世主とか言われてここに魔王を倒しにきたんだった!!
どうしよう・・倒すどころか友達になっちゃったよ。
「あ~・・・えと、カトレアさん。実は・・」
俺が言い訳を考えているとカトレアさんは俺の後ろにいたシェリルさんに気づいた。
「佐藤さん。こちらの方は・・・・」
げっ!!・・
「あーこちらの方はたまたま魔王を倒しに行く途中で見つけた牢獄に閉じ込められていた方で魔王を倒すついでに助けてきました」
「そうだったのですか・・」
我ながらよくできた嘘だった。でも言えないだろう。実はこの人が魔王ですなんて!!
「ところで佐藤さん魔王はどうなったのですか?」
「あのー・・・・」
「あー!!じつは魔王はこの城にはいなくてですねどうやら色々な所に移動してるみたいなんでこれからその後を追いかけようと思ってますです。はい!」
「え!?ここにはいなかったのですか」
「はい。残念ながら。でも安心してください。俺が絶対に魔王を見つけ出してすぐにぶっ倒してやりますよ」
これもまた心にもない嘘だった。なにせ魔王は俺のすぐ後ろにいるのだから。
「佐藤さん・・・・頼もしい限りですわ」
「は、はははははははははは・・・」
そんなことよりも俺は一刻も早くこの場を立ち去りたかった。この状況はあまりにもまずすぎるからだ。
「と、いうわけでこれから早速出発しようと思います」
「え!もう行かれるのですか?」
「はい、善は急げと言いますし、何より少しでも早く魔王の後を追いかけないとまた被害が拡大してしまいますから」
うわ・・・どの口が言ってんだほんと。
「わ、わかりました。では佐藤さんこれを持っていってください」
そう言ってカトレアさんは俺に龍の刻印のようなものが彫られた腕輪のようなものを渡してきた。
「こ、これは?」
「これは、わが国に伝わる伝説の武具の一つです。これを身に着けているものは龍の加護を受けることができます。もしも佐藤さんが危険な目にあったときはこの武具が佐藤さんのことを守ってくれるでしょう」
へぇー。なんだかすごいな、龍の加護って。これがあればとりあえずはこの先はまだなんとかなるかな?
「ありがとうございます」
「いえ、こんなものしかお渡しすることができなくて申し訳ありません」
こんなものって充分すごいとおもうけどなぁ・・・
「いやいや、本当にありがとうございます。それではそろそろ行きますね」
「はい、どうかお気をつけて。あなたに女神の加護があらんことを」
カトレアさんに別れを告げて俺はシェリルさんと一緒にその場を立ち去ろうとする。
「あ、あの佐藤さん?」
ふいにカトレアさんが俺を引き止めた。
「な、なんでしょうか?」
「彼女も一緒に連れて行くのですか?」
ぎくっ!
「え、ええ。彼女はこれから行こうとしている町に住んでいたようなのでついでに家まで送り届けてあげようかと」
「そ、そうなのですか」
俺の背中に嫌な汗がつたっていった。
「そ、そういうことなのでまったく何も心配はいりませんよ」
「わ、わかりました。そういうことならあなたもお気をつけてくださいね」
「は、はい!!」
ふぅ~あぶねー・・・まだこの国を出てもいないのにいきなりやばかったよ。
まったく本当にこの先大丈夫なのかなぁ~・・・・・
俺は不安を抱きつつもとりあえずシェリルさんと一緒にこの国を後にしたのだった。
そしてここから俺と魔王の奇妙な旅が始まるのであった。