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ヤンキーオタクの優等生、異世界で伝説のヤンキーとバディを組む。〜世界を救え? そんなことよりタイマンだ!〜  作者: 瀬綺ララ


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1-4

 少年は、「オレもスバルさんを探しているんですよ」と涙ながらに答えた。


 どうやら、そのスバルという青年は度を越したお人よしらしく、度々街に繰り出しては、困っている人の手伝いをしているらしい。


 そのせいで、待ち合わせ時間を大幅に遅れて来ることもあるのだとか。


 少年は本当にスバルの行方を知らないようだったので、貴臣は自力で探すことにした。


 悠然とした足取りで街を歩く。メンチを切られては応戦し、貴臣は確かな手応えを感じ始めていた。


 貴臣に返り討ちに遭った男達は、皆口々にこういう。


「こんなことして、スバルさんが黙ってると思うなよ」


 スバルという男は、この治安の悪い区域ではそれなりに名の知れた存在のようだ。


 貴臣は俄然、スバルに会いたくなってきた。


(たとえあの黒咲昴でなかったとしても、一度くらいはその強さを直に拝んでみたいな)


 そんなことを思いながら、歩いていたその時だった。

 

 路地裏の方から、物音が聞こえてきたのである。人間同士の喧嘩にしてはやけに騒々しい。時折動物の鳴き声のようなものも聞こえてくる。


 好奇心に誘われ、貴臣は路地裏へと入るために角を曲がった。その時、路地裏の方から老婆を背負った一人の男が走ってやってくる。


(ご老人を背負っている……まさか、この人が「スバル」なのか? でも、見たところこれと言って変な格好をしているようには思えないが……)


 思い切って、貴臣は男に話しかけてみることにした。


「すみません。もしかしてあなたはスバルさんですか?」


 男は貴臣を睨みつけてくる。老婆を背負っているためか、男に戦う意志はない様子だ。

 

「あ? テメェ、スバルさんに何の用だよ」

「お会いしてみたいんです。個人的な趣味で」


 男は貴臣の格好を上から下まで隈なく観察した後、

 

「悪ぃけど、決闘ならまた今度にしな。あの人は今モンスター狩りで忙しいんだよ」


 と素っ気なく言って、男は路地裏の方へと視線を向けた。

 

 貴臣は嬉しくなった。

 どうやら向こうの方にスバルがいるらしい。


(ようやく、「スバルさん」に会える!)


 貴臣が路地裏の方へ進もうとすると、男は慌て出した。


「おいお前、そっちは危ねぇぞ! 悪いことは言わねえから、行くのはやめとけって」


 貴臣はニッコリと笑みを浮かべる。


「心配していただきありがとうございます。でも、自分より強い敵に立ち向かってこそ、ヤンキーというものなんです」

「……はぁ?」


 男は困惑の声を上げつつ、「忠告はしたからな」と言い捨て、ゆっくりと歩いていく。


「何度も言ってるだろ、ババァ。スラムは危ねぇから来ちゃダメだって。……あのなあ、ババァ。オレは今の話をしてんの。あんたが昔魔法使いだったかどうかはどうでも良いんだよ!」


 男の声が遠ざかっていく。貴臣は路地裏の方へと突き進んでいった。


 


 

_____そして、ヤンキー男と出会った場面に戻る。



 


 初対面とは思えないほど、二人の息は合っていた。

 

 モンスターが炎を吐こうとすると、貴臣が攻撃してすかさず食い止める。

 貴臣が注意を引き、その隙にヤンキー男が胴体を蹴りつける。


 表情や動きを見れば、相手の考えていることがすぐに理解できる。これまでの人生で抱いたことのない強い高揚感に、貴臣は胸を弾ませた。


 拳を何発打ち込んだだろうか。モンスターはついに地面に倒れ伏し、鳴き声を上げることすらせずに動かなくなってしまった。


 トドメを刺すように、ヤンキー男はモンスターの腹を蹴る。貴臣はその様子を眺めながら、乱れる呼吸を整えようとしていた。


 左腕を上げる。拳の皮が剥けて、ネクタイは血で真っ赤に染まっているのに、不思議と痛みを感じない。


(足りない……もっと、闘いたい)


「そこのお前!」


 ヤンキー男が、喋りながら貴臣の方へと近づいてくる。


「見た目に反してなかなか根性あるじゃねぇかよ。気に入ったぜ……って顔コワ! ヤク中みてぇな顔になってんじゃねぇか!」


 貴臣はモノホンのヤンキーに出会えた喜びのあまり脳のリミッターが外れてしまい、端から見たらアッパー系薬物を摂取しているとしか思えない表情になっていた。


(ああ、やけに眩しいと思ったら……)


 貴臣は呼吸の合間に、途切れ途切れに返事をする。


「お褒めに、与り、光栄です」

「いや、褒めてるっつうか……まあ、一旦落ち着けや。手当てしてやんよ」


 男が、厳しい顔つきに反してやけに丁寧な仕草で貴臣の手を握りしめた。


「カミノゴカゴ」


 体が軽くなる感覚と共に、みるみるうちに拳の傷が塞がっていった。そして、先程までの眩しさがなくなり、呼吸も落ち着いていった。


「まあこんくれぇなら大丈夫だろ。ポリがいなくて良かったな。ヤクやってるって勘違いされたかもしんねぇぞ」

「……今の力は?」

「回復魔法。厳密には魔法じゃねぇらしいが、良く分かんねぇや」


(回復魔法。実にファンタジーな響きだ。ヤンキーに似つかわしくない)


 貴臣は巻きつけていたネクタイを外し、手を何度も開閉させる。何の問題もないことを確認してから、男に手を差し出した。


弌ノ瀬貴臣(いちのせたかおみ)です」


 男は手を掴み、上下に激しく振る。


「よろしくな、弌ノ瀬。俺は_____」

「知ってます。黒咲昴(くろさきすばる)さんですよね」

「あぁ? テメェ、何で俺のことを知ってんだ?」


 男は訝しげに目を光らせる。彼が黒咲昴である確信を得た貴臣の胸に、懐かしさが込み上げてくる。


(ああ、本物だ……!)


 ずっと、彼に会いたいと思っていたのだ。嬉しくないはずがない。

 しかし、率直に喜びを表現するのは気恥ずかしかったので、貴臣は落ち着いた口調で答えた。

 

「あなたの妹さんである、翔子さんとは知り合いなんです」


 男は目を丸くさせ、呼吸を震わせた。


「……翔子と?」


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