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ヤンキーオタクの優等生、異世界で伝説のヤンキーとバディを組む。〜世界を救え? そんなことよりタイマンだ!〜  作者: 瀬綺ララ


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1/12

1-1

_____「Mr.ガリ勉」と呼ばれるこの僕が、まさかヤンキー漫画を愛読しているのだとは、誰も思うまい。



 


 路地裏で、弌ノ瀬貴臣(いちのせたかおみ)は一人の男と出会った。


 金髪のリーゼント。紫色の特攻服の背に白い刺繍で刻まれた


邪男歩輝徒(ジャーマンポテト)


 の文字。


 ヤンキー漫画の世界から飛び出してきたような「理想の」男が、目の前に立っている。


 そして、そのヤンキー男は、これまたファンタジー漫画の世界から飛び出してきたかのような、異形のモンスターと対峙している。


「あ、危ない!」


 モンスターは口から炎の玉を吐き出した。ヤンキー男はその攻撃を間一髪で避ける。炎は地面に当たると、土を黒色に焦がし、シュウシュウと白い煙を上げる。


 ヤンキー男が貴臣の方へと顔を向ける。


「おい、そこのシャバ僧。さっさとどっかいけ」


 貴臣が返事をしないでいると、ヤンキー男は苛立って舌打ちをした。

 

「聞いてんのか! 邪魔だから失せろっつってんだよ!」


 ヤンキー男の剣幕に対し、貴臣は全く怯まなかった。

 

「……いやです」

「ハァ?」


 貴臣の心臓は、ドクドクと早鐘を打っている。恐怖ではなく、喜びで。

 

「シャバ僧などと馬鹿にされて、尻尾を巻いて逃げていたら、男が廃るというものです」

「……いや、お前のプライドはどうでも良いけど、危ねぇから早くどっか行けよ」

「心配には及びません。僕、こう見えて結構強いんです」

「はあ? お前が?」


 貴臣は学生鞄を地面に置き、メガネを制服の胸ポケットに差し込んだ。視界を遮る前髪を、頭を揺らして払い除けながら、ネクタイを片手で外す。


_____ “待”ってたぜェ、この“瞬間(とき)”をよォ!!


 右拳にネクタイを巻きつけ、貴臣は一直線にモンスターへと走り寄った。モンスターの胴体へと、捻った拳を叩き込む。


 ズシン、と骨に響き渡る衝撃。

 モンスターは悲鳴を上げ、長い首をうねらせた。


 貴臣は立て続けにモンスターに攻撃を仕掛ける。目を見開き、口の端を上げて静かに笑いながら。


(ああ、楽し過ぎる!)


 ヤンキー男は貴臣のその表情を見て、背筋をゾクリと震わせる。


「……おもしれぇ。ただのシャバ僧とはワケが違うみてぇだな、お前!」

 



 *


 


 時は少し前まで遡る。

 貴臣は気がつけば見知らぬ場所に飛ばされていた。


 真っ暗な部屋の中、彼の足元だけが薄ぼんやりと輝いている。

 視線を下に向ける。蛍光色の魔法陣の上に貴臣は立っていた。


 そして……一人の人間が、魔法陣の前にしゃがみ込み、祈りを捧げるようなポーズをしている。

 三角帽子で目元を覆っているため顔貌を窺うことはできないが、小柄な体躯と唇を彩る真っ赤な口紅のおかげで、女性だということはかろうじて理解できる。


 女性は不意に顔を上げ、ビクッと体を震わせた。


「あれれ? 何で? あれぇ?」


 女性はあたふたと立ち上がると、貴臣に駆け寄ってくる。貴臣の体をペタペタと触り、首を何度も傾げ、ひとしきり独り言を呟くと、

 

「あ、あの、あなたのお名前は?」


 と尋ねてきた。

 

「……そういうあなたは一体_____」


 貴臣が困惑しつつも尋ねると、女性は唇を歪ませ、声を震わせた。

 

「そ、そうですよね。まずは私が先に名乗るべきでしたね。申し訳ありません……私はラルメリア。王宮で、召喚士の仕事をしているんです」

「召喚士?」

「別の世界から、ありとあらゆる物質をこの世界に運び込むお仕事をしていて……あの、ところであなたのお名前は_____」


 ラルメリアは下手に出るような態度だ。貴臣は胡散臭さを抱きつつも、


弌ノ瀬貴臣(いちのせたかおみ)です」

 

 と答える。


「い、イチノセタカオミさん! 素敵な名前ですね!……うう、そういう話がしたいんじゃなくてぇ……」


 ラルメリアは胸に手を当て、何度も深呼吸を繰り返すと、意を決して口を開く。


「あ、あの、実は……私、召喚する人を間違えちゃったみたいです」


 そう言ってラルメリアは「てへぺろ」とでも言いたげに舌を出した。

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