夜霧
夜霧がわたしを包んでくれた
車の音にはびくびくと逃げて
快活な足音にさえサッと身をかくした
心臓だけが嫌に大きくなるわたしに
鈴虫たちは優しくて
白痴なわたしを慰めた
闇はわたしが作ってしまった
わからない わからない
闇をわたしが作ったのか
知らない 知らない
と泣いてくれている
星空は見えません
けれど夜の静寂がとても優しいのです
白い雲の幾重にも浮ぶ薄い和紙のような網に
掬われるのです
夜霧はわたしを包んでくれた
夜霧 夜霧は わからないままでいいと
ひとり 夜風となって 夜霧と一緒に
消えてしまいたくなる
そんな優しく静かな夜でした