表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

いずれ神話の神殺し

作者: カケル

「よ、よせっ、我はこの地を収める格式高い神であるぞ――」

と、馬鹿みたく宣うその頭に剣を突き刺してやった。

力なく腕が地面を打ち、命無き躯と化したその身体。

ボロボロと崩れ落ちていき、塵となって消えていった。

「……はあ」

その場にドッと座り、大きく息を吐いた。

この地を文字通り支配する神。

総勢十一柱の内、三柱をこの世から葬った。

その度に、支配されていた地域が逆に活性化し、活気を取り戻していくのだからこれほど愉快なことはない。

「よくぞまたも偉業を成したな、衛門」

「……クソ神」

「クソ神ではなく、タケミカヅチという立派な名があるのだ。敬意を持ち、崇め奉られよ」

「うるせえよクソ神が。まだ神と呼ばれるだけマシだと思いやがれ」

息を吐いて立ち上がり、地面に転がった鞘へと剣を戻す。

「ふつのみたまの剣をよくぞそこまで使いこなせるものだな」

キンと軽快な音が山中に響いた。

「俺は剣豪だ。この程度の剣を扱えなくてどうする」

塵と消えた灰を、俺は蹴飛ばす。

まだその場にあったはずの神の、悪神の姿は影も形も無くなってしまった。

痕跡もなく、跡形もなく。

「その剣を『この程度』と申すかっ。それは愉快だなっ」

宙に浮くクソ神。

胡坐をかくその膝をバシバシ叩いて笑っていた。

「貴様に力を寄越したことを、僕は誇りに思うぞっ」

「うるせえよ、その甲高い笑い声。斬るぞ」

柄に手を添えて、刀身を僅かばかり露にする。

「おお~、怖い怖い」

そう言ってクルリと上下反転して、ケラケラ笑う。

剣を抜き、抜刀術。

首を狙う。

「甘い甘い。その程度の力で剣豪と呼ぶには実力不足さ」

人差し指と中指で白羽取り。

剣を構えようにもピクリとも動かなかった。

「ちっ!」

「この地で悪さする神どもは、正直我よりも圧倒的に弱い」

「だったらてめえがそいつらを滅ぼせよ。神なんだろ?」

放された剣を、俺は鞘に収めた。

「それがダメなんだよねえ。審判によって死罪になった神以外を私的に殺してはならない。そんなどうでもよいルールが僕等を縛っている。破れば神格を失う」

「はっ、何とも腰抜けな神様どもだな」

鼻で笑う。

だがクソ神は陽気なまま。

「それは思うよ。神は基本高みの見物の腰抜けさ。だから僕は違うやり方で悪神を討つ方法を考えた」

指を差して。

「君さ。神を殺しうる力を持つ人間。この世のどの剣をも一振りで破壊してしまうほどの実力者。どうだいその剣は、なかなかの使い心地だろう?」

「ああ、愉快極まりない。その上神をも殺させてくれるなんて、反吐が出る優しさだ」

「優しさじゃあない。僕はこの地が好きだ。けれどそれを壊そうとするどうしようもない神がいる。邪魔なんだよ。少なくとも、他の神も彼等を厄介に思っていてね。君と言う神殺しがいることがむしろ都合がいいんだよ」

トンと着地して、奴は腰に手を当てた。

「しかも僕の評価も上がる。そんな人間を選んだ僕の株が上がるんだよねえ」

「都合のいい駒かよ。ほんと神ってのはイかれてる」

「そうだよ、神はイかれてる。善神であろうと、考え方は人とは桁外れにズれているからね」

「だから神は嫌いなんだよ、クソが」

踵を返し、山を下りる。

「あらら、拗ねちゃった」

そして俺の後ろに付いてくるクソ神。

不快で仕方がない。

「次は何処へ行く? 河内か? 筑波か?」

「何処でも。この国の神を全て狩る」

「おおっ!? それは素晴らしい。お上もさぞ喜ばれることだろうなッ」

クソ神は楽し気にそう言った。

俺は何も楽しくはない。

ただ神を殺すだけだ。

家族を、村の皆を殺した奴を、そして今も他の奴らを苦しめる神どもを。

「俺はただ神を殺すだけだ」

「ヒヒッ、それは楽しみだ。この地もいずれは平和になるだろう。そして語りつがれるだろう、お前の伝説を」

「どうでもいい。伝説だろうが起伝だろうが、俺の知ったことじゃない」

目の前の崖。

躊躇なくそこから飛び降りる。

重力に沿って、俺は地面へと急速に落下していった。

そして地面へと大きくヒビを入れながら着地。

身体のどこにも損傷はない。足に痛みすらない。

森の先を進んでいく。

まだ殺すべき神は多いのだ。

やることは多い。

俺を垂らす太陽の光が、鬱陶しかった。


https://ncode.syosetu.com/n3853ip/


【集】我が家の隣には神様が居る

こちらから短編集に飛ぶことができます。

お好みのお話があれば幸いです。


いいね・ブクマ・高評価してくれると作者が喜びますm(__)m

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ