旅の始まりのきっかけ
今回長文になってしまいました。
昨日は本当に最悪だった。姉が励ましてくれても、夕飯にしようと言ってくれても泣き続けていて、後になって恥ずかしくなった。いくら体格が少女だからって、年齢はもう成人しているのだ。恥ずかしく感じる。転生先が少女で良かった。
昨日、魔法が使えないといたずらっ子的な少年に言われたが、あの後考えて、魔法使い以外にもあるだろうと考えた。例えば戦士とか僧侶とか。
しかし、この話は泡となって消えた。分かったのは昨日の夜。お母さんと姉が言っていた。「エルフは人間に悪く思われるから、街には出かけられないんだよね」なるほど。街に出なかったのはそういう事か。
「レイラは魔法が使えないから魔法使いにはなれないのよね。エルフは魔法使いになるって決められているのに……」
あの子はどうするのかしら、とため息をついていた。
……ねえ。お願いだから、それを私の前で言うの、やめてもらえないかな。
姉とお母さんが、なぜだか知らないけれど私のいる前で言う。家族は本気で心配してくれているんだろうけど、なんか私が責められている気分になるから、嫌なのだ。だから、言うならせめて、私のいない時とか、寝ている時とかにしてほしい。もうちょっと気を遣ってよ。
もうこれ以上聞きたくないので、私はさっさと布団に潜り込んだ。
私が魔法を使えないと知ってから数日が経った。
数日経って、他のエルフ達の視線が痛いと思うようになった。
外に出る時、大人達がヒソヒソ話しているのを見て、私の事を言っているのではないか、と恐れてしまう。
おまけに、同じ歳くらいの子供達からは、なにかとイタズラをされるようになった。その度に姉が守ってくれたけれど、やっぱり、私は良く思われていないんだな、と改めて実感してしまう。
私の居場所って、どこなんだろう。
いじめられる度、いつもそう思ってしまった。
今日もまた森に行く。いつもこの時間が苦痛の時間となる。森へ行くには、いつもみんなと一緒になる。だから、木の実投げられたりとか、ひどい時は道具を投げられたり。ちなみにその道具というのは当たってもまあ大丈夫な物もあるし、刃物を投げられる時もある。あれは当たったら即・死亡するだろう。死ななくても、無傷では済まされない。なにかを分かってて投げているんだろうか。あの人達は。
籠を背負い、姉と一緒に行く。それと同時に、色々な家からバラバラと子供達が出てくる。そして、みんなで整列してから出発する。私も整列をした。並んでいる途中で、チラッとある場所を見る。視線の先には、こちらを見ながらニヤニヤしているあの「イジメ三人組」がいる。あのニヤニヤしている奴らは、私をイジメするための組織の中心人物といっていいだろう。あの人達が中心となって動いている。その部下は命令された事をやる。
……とまあ、そんな感じだろう。
ニヤニヤしている事に気が付いたらしい姉が、そいつらにㇺッと睨んだ。おかげで、森に行くまでの間は大丈夫だったが。
無事に森に着いたし、生えている食材でも探しますか。
森の中を歩き回っていると、食材を発見した。おおっ!と喜びながら採る。いやー食材見つける喜びが分かった気がします。
そうやって探して、何時間が経った事だろう。気が付けば日が傾いていた。
「あ、もうこんな時間。おーいっ。帰るよ、お姉ちゃーん!」
思いっきり叫んだが、お姉ちゃんの姿が見当たらない。
「ね、ねえ?お姉ちゃーん!」
今度はさっき以上に思いっきり叫んだ。姉の姿も見当たらない。いや、あの悪ガキ三人組も、他のみんなもいない。
私の中で、嫌な予感がした。
慌ててみんなの家がある広場へと戻る。と、家が、広場が、火の海と化していた。
「うそ……?」
これ、誰のしわざ?まさか、あの三人組?いやいや、あいつらはあそこまでしない。こんな風になるのは魔物か、魔族くらいしかいないはず。
中央に、誰かがいた。私は口元を押さえる。
———人間だ。
……やばい。目が合った。どうしよう。
そう思いながら、私の意識は途切れた。
レイラと人間の目が合った。
まだいたのか、と人間が思っている間に、レイラが気を失う。
人間は、まだ気を失っている間に殺そうかと考え、レイラに近づく。
が、その瞬間。気を失っているはずのレイナが、急にゆらり、と立ち上がったかと思うと、人間に近づいていった。青いはずの目が片方だけ赤くなり、その目が人間を捉えた瞬間に。
ドン!
と、人間が弾き飛ばされた。
「大人しく死んで。あの世で罪を償う事ね」
そう吐き捨てた直後、レイナの体がまたゆらりと揺れて、ドサッ、と倒れた。