新事実
奏さんの話を簡単に要約すると、ショッピング中にあるアイドル事務所のお偉いさんからスカウトされたということだ。
彼女は断ったらしいのだが、そのスカウトマンが非常にしつこかったらしく、奏さんはある条件をクリア出来たらアイドルになるということを約束してしまったらしい。
そしてその条件が俺がマネージャーになることらしい。
奏さんは俺があの結城先生だということに勘づいていた。そして自分で言っていいのか分からないが、優芽を含むシャーベットの人気に火をつけた導因であるだろう俺にプロデュース力を期待して話を持ちかけてきたと。
「なるほどですね……」
俺は非常に混乱する。
奏さんは確かに可愛い。アイドルに向いているし、アイドル界に入れば間違いなく成功するだろう。
だが、もし奏さんに力を注いでシャーベットのライバルとなるアイドルまで進んでしまったらどうしようか。
俺はシャーベットのファン。
これまでもこれからもずっと応援していくつもりである。
シャーベットのことを優先すると考えるならば、俺はこのお願いを断らなければならない。
だが、俺の中でマネージャーをしてみたい、と思ってしまっている自分もいるのは確かだ。
奏さんを含めた、そのアイドルメンバー達を自分がプロデュースしてもし大成することが出来ればこれ以上に達成感を感じることができるものは無いだろう。
葛藤が止まらない。どちらにも同じ強さの想いがある。
1度冷静に考えてみよう。
シャーベットはもう既に俺の力なんてなくとも、彼女らにやって行けるはずだ。葉月ちゃんに関してはもう少し布教するつもりであるが、メンバー全員が分け隔てない人気を獲得したあとでは、俺の力は確実に必要が無くなる。
それに対して奏さんはまだ世間に出ていないいわゆる宝石の卵。
俺が断ることで卵が羽化することなく埋まったままでいるのも非常に勿体ない。
そもそも俺は今、作家という仕事に営んでいる。そのうえでマネージャーをするとなると、俺の生活はどうなってしまうのか。
正直小説の方でたっぷり稼いでいるから、これ以上お金が入ってきたとしても使い道がない。
マネージャーの仕事というものが、在宅でできるものでかつ、スケジュール管理に関してはその事務所の方にしてもらえるのならば、しても構わないか。
俺は考えが纏まったので一旦奏さんに考えたことの全容を伝える。
彼女は笑顔で了承してくれたので、案外話は円滑に進むかもしれないな。期待通りの答えが返ってきてくれるかもしれない。
放課後になり、帰宅部の俺は早速家に帰る支度を始めた。
準備は数えるまもなく終了し、俺は優芽との待ち合わせをしてある校門へと急ぎ足で向かう。
案の定、優芽は多くの生徒から囲まれており、困っている様子である。
ここは兄らしくさせてもらわないといけないな。
俺は優芽に群がる人の山を地道に超えて、ようやく優芽が俺のことを発見し、俺の元へと駆け寄ってきた。
「では皆さん、私は帰りますね」
「もっと話したいなぁ」
「お兄さんずるいー」
「なんか似てないね」
「それなー」
「さ、優芽。俺、人混み苦手だから早く帰るぞ」
「うん。兄さん」
俺は優芽の手を強く握り、校門の外へと出ると家の方向へと歩き出した。
芸能人にプライベートはない、とよく言うが俺はその考えがすごく嫌いだ。
芸能人も一人の人間。プライベートは大事にしたいはずなのだ。
それなのに有名人たちは、常にマスコミという恐怖に追われ続けている。
優芽はまだ週刊誌などに捉えたことは無いらしいが、それでも日常に危険は伴っている。
ピロンッ
ふと隣からスマホの通知音が響く。やけに大きく感じたのは気のせいだろうか。
「兄さん。お母さんとお義父さんから大事な話があるらしいから急いで帰ってきてだって」
すみません。
1ヶ月も更新せずに放置しておりました。
また投稿再開致します




