表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

21/22

きっかけ

俺は頭が混乱していた。


「マネージャー?」


「はい、マネージャーです」


 マネージャーというのはいわゆるあのマネージャーだろうか。

 芸能人やらアイドルやらの活動をサポートするやつ。


 もしそうだとするならば何故俺に話を持ちかけたのだろう。俺と彼女は初対面なはず。

 俺は作家をしていること以外、普通の一般人だ。


 このことは優芽や家族しか知らないはずなのに。


「話がよく分からないんだけど…… 」


「私、嫉妬しているんですよ。シャーベットの方々とあなたの関係」


 ぎくッ。なぜ俺とシャーベットの関係を知っているんだ。優芽と義兄妹関係であることはこの学校中に広まっているはずだから知られているのは当たり前だ。


「優芽さんのお兄様なんですよね。非常に羨ましいです」


「あぁ…はい」


 心配は杞憂だったようで、俺が葉月ちゃんに直接会ったことは知られていないようだ。


 俺は心の中で胸をなでおろし、ひと安心する。

 そもそも彼女が俺と葉月ちゃんが会ったことを知る術がない。


 最初から心配する必要なんてなかったのだ。

 いつもの冷静な俺ならこんな間違いするはず無かったのだが……最近色々と周りの状況が変化してきて頭がおかしくなっているのかもしれない。


 久しぶりに帰ってからは原稿を書いてみるか。ここ数日どうもやる気が湧かないで書いていなかったが、編集さんにも急かされているし頑張れなければならない。


「そして○○の作者である結城先生でもありますよね?」


 俺は誤魔化すことを考えたが彼女の瞳は完全に確信している様子である。

 下手に演技するよりも楽な道を歩める気がする。


「うーん、まぁそうだけど。よくわかったね」


「あれ、驚かないんですね。その反応は想定外です」


「うん、逆に強く否定しても本人です、って言ってるものだからね」


 俺はあくまで平然を装っている。俺があの結城先生だということは本当に周りにバレたくない。


 自分で言うのもなんだが、きっと正体がバレてしまったら俺は学校中の人という人から密集してくるに違いない。


 それほどに俺の作品の影響力は強いのだ。それに加えて、今の具合ではシャーベットのことに関しても色々と問題が発生するに違いない。


 警戒するものが増えるだけである。


「結城さんの影響力とプロデュース力に期待してお願いです。私のマネージャーになって貰えないですか?」


「あの、奏さんはアイドル活動を営んでいらっしゃって?」


「いえ、今はまだ」


「では何故マネージャーを?」


 俺にプロデュース力があるとは到底思えないのだが、彼女は一体何を思って?


「つい昨日の話です。私は数少ない友人たちとショッピングを楽しんでいました」


 数少ないって……わざわざ言う必要あるか。数少ないと言っても俺よりは100%多いのだから自分の存在が本当に虚しくなるな。


「その帰り道です。怪しい視線を感じ始めたのは」


 何やら不穏な空気だが、怪しい勧誘とかではないんだよな。


「そして突然その視線の持ち主が私に話しかけてきたんです!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ