無・意識
俺は写真を撮りたい欲をどうにか心の奥底に沈めると、なんらいつもと変わらないような表情を浮かべて優芽の体を揺すった。
ここ最近俺が優芽を起こすことが多くなってから分かったことがある。
優芽は大変目覚めが悪い。
起きた時の態度が最悪なのだ。例えばと言うと、優芽が俺を家族として認めてくれる前のような態度である。
彼女の寝起きにはいくつかのパターンが存在する。説明するのが非常に面倒臭いから割愛させて頂く。
「優芽ー、起きろー。朝だぞ。学校だぞ」
「…」
これはもう既に分かっている。1回じゃ起きない。最低でも3回は起こす作業をしなくてはならない。
赤ちゃんは起きた時に泣く、とよく耳にするがこれもまた同じようなものだろう。
あやす、という動作は変わらない。
「はぁ」
俺は大きくため息を着くと、深呼吸し先程とは比にならないほどの声で叫ぶ。
「優芽!起きろー!学校学校学校!」
傍から見れば俺は学校大好き人間みたいに見えるのだろうか。決してそんな訳では無いのだがな。
どちらかと言えば嫌いという気持ちが勝る。
嫌いというのも言いすぎな気がするが。
「んぅ…」
何やら色っぽい声を発するが、俺はあくまで真顔である。
過剰に反応してしまって、それを仮に優芽に見られてしまった場合。せっかく築き上げた兄妹の絆という絆が全て崩壊してしまう。
俺はこのまま優芽が幸せになっていく運命を路地裏からこっそりと見ていく人生でいい。
『優芽は起きそうにない』
某国民的RPGで表示されそうな文章。俺は頭の中でそんなしょうもないことを考えていた。
あれからも優芽は何か意地でも起きない意思でも働いているのかというほど目覚めなかったので最終手段でどうにか起こした。
決して変なことをした訳では無いぞ。絶対に!
今日の優芽は珍しく機嫌が良かった。
聞けば昨日のライブのことについて夢を見ていたらしい。
それを聞いて俺は一瞬、悪いことをしてしまったかと後悔しそうになったが学生は学生。
平日は学校に行かなければならない。
俺は今日、日直であるためいつもよりも少し早く出なくてはならない。その節を優芽に伝えると偶然優芽も日直らしく2人で少し早めに登校することになった。
いつもよりも少し早く家を出たこともあって、景色は同じはずなのに普段と何かが違うような気がする。
不思議な雰囲気だ。周りを歩いている人全員に見覚えがない。
俺たち学生よりも少々早めに電車やバスを利用しているのであろう社会人さんたち。
俺もいつかしっかりとしたスーツを着て毎日会社に通うのだろうか。
ブラック企業、ホワイト企業。俺はホワイト企業がいいな。基本誰もがそちらを望むのだろうが、稀にドMの人はブラック企業を望んでいたりする。
俺もいつか結婚して、子供が出来て孫が出来て、運が良ければ曾孫が見れるのか。
今のままではまず彼女さえできるか不安である。近年生涯未婚率が上昇していると聞くし本当に不安である。
優芽の子供も見てみたい。きっと優芽にそっくりの超絶美人ちゃんが産まれてくるのだろうな。
「優芽の子供見たいなぁ〜」
無意識に欲が口に出ていたことを俺は知らなかった。




