兄妹
俺は優芽の分を含めた朝ごはんを作りながらため息を吐いた。
今日から学校である。
昨日は言葉にできないほどにライブが楽しかったというのに、現実というのは残酷で普通に学校がある日だ。
何らかの理由で臨時休校にならないかと期待を膨らませてもその期待に学校が答えてくれるのは非常に稀。
学校生活を楽しく過ごせることが出来れば、こんなに学校に行くことに嫌悪感を抱くことはないだろうに。
残念なことに俺に友人と呼べる人は一人もいない。
みんなの前で目立って演説をしているやつだとは到底思えないだろう。だが、嘘では無い。本当のことだ。
原因は大体目星がついている。
高校デビューという言葉を聞いたことはあるだろうか。
俺がまだまだ可愛かったであろう中学生の頃。その頃も俺は友達がいない、万年ぼっち野郎だった。
そんな俺に希望を与えてくれた言葉が高校デビュー。
『高校デビュー』とグーグル先生を頼っても詳しい内容は出てこない。
学生内での暗黙の了解?というのだろうか。不思議と言葉にできなず表すことは難しいが身体が記憶しているのだ。
そもそも中学生の頃に俺に友人が出来なかったのは一体なぜだったのか。未だその答えを出そうと頭を濡れ雑巾のように絞っても出てきそうにない。
高校デビューが俺にどんな希望を齎してくれたのかと言うと、友人ができるのではないかという気持ちが俺の中に芽生えてしまったからだ。
特別な行動をしなくても、勝手に誰かが自分に話しかけてくれてそこから友人関係に発展する、そんな高校シミュレーションを考えていた頃が俺にもありました。
でも何度も言うが現実はそんなに甘くなかったらしく、待ち体勢でいた俺にバチが当たったのかクラスメイトたちが俺を抜いて色々とグループを築いていってしまったのだ。
気づいた時には既に手遅れ。俺にどうすることも出来なかった。
我ながら一生の後悔点である。
どうせなら敢えて今まで関わり合いがなかった女子たちと仲良くなることでも考えてみようか。
偏見だが、既に出来上がってしまった男子グループに今更仲間入りすることは非常に困難な事だと思っている。
それならば女子しかないと。他学年でも他校生でも、他クラスでもない。
まず初めはクラスの女子生徒から。
俺がこの高校に入学してからというもの、俺たちの学年にはこのような言葉があった。
『絶世の二大美少女』
如何にも2次元作品の、特にラブコメ作品で出てきそうな2つ名だが、なんとこの現実にも存在するのだ。
1人が、桜海 海里さん。もう1人が椎名 芹さんだっただろうか。
今まで特に気にしたことは無かった。でも妹や家族に心配をかけないためにも俺にも友人は必要不可欠な存在。
ついこの前、優芽に仲の良い女子とかいないの?、と聞かれたばかりだ。
これは遠回しに俺に友人を作れ、と伝えてくれていたに違いない。
よく妹の意志に気づいた俺。誰か褒めてくれてもいいんだぞ。
いつの間にか意識していないうちに朝ごはんが完成していたので俺は机の上に料理を並べていく。
今日はサンドイッチにしてみた。
初めての試みである。優芽が喜んでくれるか分からないが、結構な自信作。邪なことを考えながら作っていたから変な邪気を纏っている…わけがないので、妹の反応に期待する。
いつも通り俺は優芽の部屋に呼びに行く。きっと昨日のライブで相当疲れていたはずだから今日はまだ眠っていることだろう。
現役女子高生の寝ている姿を見るのは、しかも超人気アイドル、非常にはばかられるが許可は得てあるので遠慮なく入室する。
案の定優芽はまだ規則的な寝息を立てて眠っている。
寝顔が非常に可愛らしい。
俺はポケットに手を入れてスマホを…っと、いかんいかん。危ないことをしてしまうところだった。
俺は優芽の兄。そんな気持ちなんて持ってはいけない。




