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13通目のラヴレター  作者: ネクタイ
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3通目 幸せと言える場所へ

『「外」で会う度、俺は幸せだなって思う。

【つ】き合えて本当に幸せ。

本当の意味で外で会えたらもっといいのにって思う。

そのためには俺も頑張んないとね。


檻の中は退屈だけど、他の棟に君がいるって思ったら頑張れそうだよ。君も他の棟で頑張ってるもんね。

いつか君の書いた物語が読みたいな。とか言ってみたり。


あぁ、ほんと俺は幸せ者だな。

君のおかげでほんと幸せ。』



「君の隣にいるなんて夢みたいだなあ。」

タバコを揉み消しながら彼が言った。返事に詰まっていると、初めて会ったときの様に、ニィッと目を細めて笑った。

「俺さ、こんな病気だし、君の隣にいていいのかな。」

表情を変えず彼は私に問いかけた。だが、その声はどことなく震えていて。不安が伝わってきた。

「大丈夫ですよ。」

落ち着いてゆっくり語りかける。彼は目を開きながら私のことをまっすぐ見つめた。

「私があなたの居場所になります。幸せと言える場所になります。」

自分でも何言ってるんだろうって思う。でも、彼がくれた幸せという言葉。それに応えたいという思い。あんな突拍子もない告白に応えてくれた恩返しがしたかった。


しばらく彼はフリーズすると、プッと吹き出した。

「ははっ、君はほんと真っ直ぐだね。悩みごとも飛んでっちゃうよ。」

彼は彼なりに何か考えていたのだろうか。首を傾げていると、頭をぽんぽんと撫でられた。

「君が告白してくれなかったら、今こうしていられないんだもんね。」

「あの時は・・・。」

「ほんと、君が俺を選んでくれてよかった。」

新しいタバコに火をつけながら彼は言った。その姿に少しホッとしていると、ふと、この事を小説にしようと思った。


彼の一字一句を忘れないように。


あれ?なんで今そんなこと思ったのかなと悩んでいると、定刻通り彼の腕時計がなった。

今日何本目かのタバコを消しながら、彼はまた明日ねと笑う。

私も悩んでいたことを忘れ、彼に手を振った。


彼の隣にいれば不安なんてない。

そう思っていたのに。


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