2通目 君の隣にいる条件
彼からの手紙は決まって、火、木、土曜に渡された。
つまり、私からは決まって、月、水、金曜に渡していたことになる。
この法則は当たり前すぎて気付かなかったのだが、檻から出た今でもその曜日のその時間になるとわくわくしたのを思い出す。
「返事くれると思ってなかった、ありがとう。」
いつものチョコレートを差し出しながら彼が言った。私はそれを口に運びながら、そうですか?と答えた。
「正直、重いかなって思ってたからさ。貰ってくれただけで嬉しいのに、返事まで。」
「嬉しかったですよ。手紙。」
「それは良かった。はい、お返事。」
今度は1通目と違って鮮やかな黄色が目立つ封筒だった。
向日葵がデザインされたその封筒を見ていると、彼が照れくさそうに言った。
「君は向日葵みたいな人だね。」
「えっ?」
「明るくて真っ直ぐで、大輪の向日葵みたいだなって。まだ君のことあんまりよく知らないんだけど。第一印象ってやつ?この封筒も君みたいだなって。」
思わぬ褒め言葉に頬が赤くなる。
それにつられて彼も顔を赤らめる。二人して真っ赤になっているとどちらからともなく顔を背けた。
「は、はは。照れくさいこと言っちゃったかな?」
少し余裕をなくした彼が言う。私は、そんな事無いですよと顔を上げられずに言った。
ピピピッ。
彼の腕時計が逢瀬の時間の終了を知らせる。時間ですね、と私が言うと、また明日ねと彼は笑ってみせた。
『そんな事があったんだね。
【そ】ばにいてあげられなくてごめん。頼りない男だな、俺は。
俺もちゃんとしっかりして君の周りの人に認めてもらえるように頑張るから。一緒に生きていこうね。
趣味のこと教えてくれてありがとう。
小説家さんなんだ。すごいね。
いつかは君と俺の物語も・・・なんてね。
早く会いたいな。好きだよ。』
さっきまで会ってたのにもう会いたい。
周りの忠告もしっかり受け止めてくれている。
なんて素敵な人なんだろう。
私は原稿用紙とレターセットをを取り出すと、筆を走らせ始めた。