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ある日魔法は唐突に  作者: 亜入
第一章
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第二十話 心霊現象 後編

 未来の姿を見てこちらはホッとしても、どうやら未来はそう思っていない様子。


「ダメじゃないか! 君は魔法使いなんだぞ、せめて彼女たちと一緒に行動しないと!」

「ご、ごめん、つい気になっちゃって……。ってあれ? 彼女たち?」

「ん? さっき下で君のクラスメイトがいたけど一緒じゃなかったのか?」

「あー……、いや一人だけど?」


 ここまで来た経緯を軽く説明する。昨日翡翠ちゃんから心霊現象の動画を見たこと、最初は行く気がなかったが取り壊し話を聞いて来てしまったこと。翡翠ちゃんたちの後ろをコッソリついてきたことは隠して……。

 あらかた話を説明した後に一つ間をおいて深呼吸。

 そりゃそうだ。だってここに未来がいることが心霊現象よりもビックリしたのだから。

 ……でも何故未来がここにいるんだろうか?

 未来がここにいる理由をそれとなく聞いてみた。




「例の動画の影響で本来解体するはずだった業者が気味悪がってね……。心霊現象なんて本来は専門外だけどもしかしたら誰かが魔法でイタズラしている可能性もある。そこでビルの所有者が学園に調査を依頼したんだ。……でも誰も手が空いてる人がいなくて私に仕事が回ってきたというわけさ。はぁ……」

 いつもの未来の姿ではなく、まるで会社に取りつかれた会社員みたいだ。

 まぁ確かに境遇は少し似ているのかもしれない。

 それにしても未来は自分のことを雑用係と言っていたが、本当のことらしい。

 

 未来の話を聞きながら二階の探索もする。しかし未来が既に調べてしまった、と。

 午前中に一階と二階を探索し、午後はメインである三階を調べようとしていたところだったみたいだ。

「んー、こっちは何も目新しいものはないかな」

 見落としがないか確認するも生憎手がかりになるものは見当たらない。

 結局そのまま何も起こらず階段を登り三階へ。

 階段に異常はないか慎重に歩みを進める。慎重に一歩ずつ進んでいるところ、世話話をするように重要な話を振ってくる。

「本当はアリスを呼ぶか考えたんだ。もし魔法が原因なら魔法を視覚できる君がいてくれた方が私が探すよりも早いしね。ただ君を同行させる理由を先生に言えなくて……、もし先生に隠していることがバレたら恐ろしいことになる……」

 恐ろしいこととは一体……。あの温厚そうな先生が怒るところが想像できない。

 気がつけば例の大部屋の前に到着。未来は周辺を調べようとはせずに扉をジッと見る。

 全ての元凶はこの扉……?

 実際に目の前にすると、身長が縮んだせいで大きいものに迫力を感じる。

「ここであってるよね? この扉からは光も何も見えないけど」

「その能力は本物みたいだね。私の見立てが正しければこの扉はただの扉だよ」

 そう説明すると何のためらいもなしに、いきなり扉に手をかける。

「ち、ちょっと!? まだ心の準備が!」

「いいかいアリス。これは私にはできないこと、私が扉を開けたら部屋全体を見るんだ」

 未来は扉を一気に引く。


 すると聞こえた。

 あの動画と寸分狂わず同じ悲鳴が。


「きゃあぁああああぁぁあああ」


 甲高くうるさい声で耳を塞ぎたくもなる。

 しかし未来はその声に屈することなく、ゆっくりと扉を開く。

 未来が頑張っている姿を見て、こちらも部屋全体を注視する。

 部屋の構造は動画で見ているので頭に入っている。構造といっても大したことはない。

 壁で遮られていることもない、ただの大きな会議室。だけど一つ明らかにこの部屋の中で不思議なことが起こっている。

「何か見つけたかい? 何処か光る場所を!」

 未来の見立ては正しいみたいだ。


 そう、光。


 何度も見たあの燦爛とした白い光。あれは魔法だ。

 でもその光の出どころは人でもなく、未来でもない。あの場所は……。

「あの一番奥の大きい机! あれから光が見える!」

 一番目立つあの大きな机。いや、よく見れば机が光っているというか机から光が漏れ出している……?

 

 ともかく! あの机が異常なことがわかった。

 二人で顔を見合わせ、一緒に机を調べ上げる。未来が扉から手を離すと悲鳴が聞こえなくなり、光も消えてしまった。

 悲鳴と魔法は連動している?

 ここで考えても仕方がない。原因はもう目の前にあるのだから。

 豪華なデスクには引き出しが幾つもあった。

 二人で虱潰しに引き出しを見ていく、一段目、二段目……、しかし何処も中身は空っぽ。

 下から見ていった未来も何も見つからなかった様子。全ての引き出しを探るも見つかったのは瓦礫の残骸くらい……、あれ?

 何処にでもありそうな石ころを発見する。しかしその石ころは不思議なことに僅かな光を纏っている。

「これ……、少し光っているんだけど」

 未来に石を渡すも、流石の未来もこれが何かわからないようだ。

「……一度学園に戻らないと」

 自分の目では明らかに不思議な物体。光っているなら即ちこれは魔法ということになるが……。

 未来でも正体がわからない石ころ。

 一刻も早く学園に戻ろうと二人で廃ビルから離れる。大部屋から離れる時はもう悲鳴が聞こえることはなかった。


後数話で完結です


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