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ある日魔法は唐突に  作者: 亜入
第一章
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第十四話 光明は唐突に

「そんな……」

 

 先生の言葉を聞いてガクッと肩を落とす。自分で有栖川咲を生きていくとは言ったものの、すぐさま簡単に心を入れ替える気は起こらなかった。

 同時に自分自身の無力さに痛感する。何とかなりそうだという淡い期待も心の中で空しく散った……、かのように思えた。


「今の君には……ね。でも私たちはできることがある。昨日も話しただろう? 安心してくれってね。だから漂流者の問題をどうにかすることよりも君自身のことを考えよう」

「……え?」

「これからはあなたが何かをするんじゃなくて私たちが行動を起こす番ってこと! 学園全体で有栖川ちゃんを応援するのは難しいけど、私と未来ちゃんが全身全霊をかけて君を元の世界に戻す、必ずね」


 今度は昨日のように泣かなかった。昨日同様に未来と先生の言葉には暖かい何かがある。それがあるから安心できるし、心も身体も自然と落ち着くことができる。

「ありがとうございます。……でも現状どうしようもないんですよね?」

 頭の中は冷静だ。別に嫌味があるように発言したわけじゃない。昨日この世界に来た自分をここまで暖かく向かい入れてくれた未来たちを疑っているわけではない。

 信頼しているからこそ率直に質問する。

「手がかりが全くないわけでもない。あるとすれば……君自身だよ、アリス」

「……ん? 話が全然見えてこないんだけど。もう自分にできることはないんだよね」

「――魔法、だよ」

 漂流者という大きな問題に囚われすぎて存在を忘れていた。ここで話が繋がるのか、と言わんばかりの伏線回収。

 漂流者は漂流者、魔法は魔法として物事を考えていた。


 そうか! 魔法だ! 魔法があるじゃないか!


 そう考えると何でもできそうな気がしてくる。重力を無視した空中移動だってできる力、それなら漂流者の問題をどうにかできそうにも思えるが……。

「手がかりとは言え、ごく僅かな可能性だけどね。有栖川ちゃんの魔法が未知数で何にもわからないからこその手がかりだよね」

 それだけでも大きな進歩だと思う。可能性があるというのなら黙っていた未来も人が悪いと思ってみたり。

「でも先生。それを一つの可能性として考慮してもいいのか? 漂流者に対する魔法なんか聞いたこともない」

「あら? 昨日はそれしかないって未来ちゃんも同意してくれたじゃない。それに有栖川ちゃんの魔法について考えなきゃいけない時期でもあるし、一石二鳥じゃない?」

「それは……、そうかもしれないけど」

 未来は口を閉じてしまった。話を聞いた感じは自分の魔法とやらの可能性は宝くじに当選するよりも低いのかもしれない。もしくはそれ以下なのかも……。

 でもゼロじゃない。それだけでもやりがいがあるじゃないか。


「やります! 何だってやります! だからその……、有栖川咲の魔法について教えてください!」


 二人に向かって頭を下げる。ここは魔法使いが集う場所。魔法に可能性を見出しているのならこの場所はちょうどいい。

 ……だから未来は幸運だと言っていたのか。

 だがしかし先生は少し困惑している。

「あー……、何から説明しましょうかね」

 先生が戸惑っていると未来はすかさずフォローを入れる。

「端的に説明しよう。まず魔法はあくまで個人が持つ性質であって、いくつも魔法を自在に操れる人はいない。だから私のように魔法が使えるからといって他の魔法を使うことはできない。それに……、今の君は魔法が使えないんだけどもね」

「魔法が……、使えない?」

 おかしな話だ。だってさっきは魔力が学園の中でも秀でていると言っていた。現に紙は真っ黒くなったし。

「有栖川ちゃんの魔力は学園の中でもトップクラス。でも魔力があっても魔法が使えることとは話が変わってくるの」

「そんな……、じゃあ自分は魔法が使えないのに何故学園の生徒でいられるんです?」

 当然の疑問をぶつける。二人の説明じゃあ自分がここにいる理由がわからなくなる。


「君が……特別だったからだよ。有栖川ちゃんは例外だった。なんせたった一年で魔力がゼロから最大値に、しかも一般的に魔力の成長は十歳程度で止まるのに君は十二歳から伸び始めた。この界隈でもこの逸材を一般人の道を歩ませていいのか議論になって……、成績は申し分ないし特例として入学を認めることになったみたい。有栖川ちゃんがここにいる理由、それは成長させるためだね。まぁ、ちょっと学園内外で有名になってる……かしらね」


 衝撃の事実だった。自分の入学の裏側にそんな背景があったなんて……。

「自分にそんな過去があったんですね……」

「話をまとめるとあなたはこの学園で魔法をよく学び成長する。私達は有栖川ちゃんの魔法を探り当てる。もちろん漂流者の研究もね。それでしばらくやっていこうと思うんだけど、どうかな?」

 こればかりは先生の言うことに賛成するしかない。何にせよしばらくは有栖川咲としてこの学園で生活を過ごさなきゃいけないことは理解できた。

「――わかりました。自分の魔法に賭けてみます」

 改めて心に誓う。自分を救うために、そして彼女も救うためにも。

「よろしくお願いします」

 昨日未来に言ったセリフをもう一度口にする。


 しばらくはこの世界で暮らしてみよう。のんびりと自分と向き合って。

 

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